わたしのソウルフード-食べ慣れたものから普段着の文化をさぐる③

第3回:サンス・リベーラ・アルセニオ先生(スペイン:マドリード出身)

『週末に近隣の人たちが集まって食べる』

-ピスト(Pisto)-

日本のスペイン料理店では見つからない
 日本でスペイン料理店に入るたびに、わたしはピストを探します。「やっぱりないか」と確かめたところで、じゃあ、何を頼もうか考えるのです。
 ピストは、わたしの故郷ではとてもポピュラーな野菜料理です。
 ピーマン、ナス、きゅうり、トマト、タマネギ、ニンニクなどを炒めて、煮込んだもの。塩味にトマトの甘さがマッチしておいしいのです。ときには目玉焼きを入れたり、冬なら豚肉を入れる場合もあります。もっとも、「目玉焼きは違う世界だ!」と言う人もいますが。
 わたしにとっては、おふくろの味で、毎日食べても飽きません。まあ、実際は、毎日というわけではなく、週末にみんなが集まるときに出ることが多かったです。ラ・マンチャ地方では、朝はコーヒーとパンで、ピストは昼に食べることが多いでしょう。トマトが入っているので、夜食べると重い感じです。

カスティーリャ・ラ・マンチャ州の郷土料理
 ピストは、カスティーリャ・ラ・マンチャ州に昔からある料理です。ニンニクを多めに入れるとか、地域によって味が少しずつ違います。
 週末に、近所の人たちが集まってご飯を食べますが、そのときは、それぞれの家で担当が決まっているのです。うちのお母さんはピストの担当でした。みんなが持ち寄った料理を、分けて食べるのです。
 スペインの味の傾向は、地方ごとに特徴ある食材があることでしょう。エストレマドゥーラ州は、チョリソーと生ハム。カスティーリャ・ラ・マンチャ州は、野菜。アンダルシア州は、オリーブオイルなどです。こうした特徴を活かした味が作られるので、同じ魚料理でも、ビルバオ(濃い)とバルセロナ(薄い)ではソースが違います。