わたしのソウルフード-食べ慣れたものから普段着の文化をさぐる②

第2回:ソムカノック・イムサニット先生(タイ:ノンタブリー県出身)

『採り立てを父が料理してくれた』

 

-タムルンのお吸い物-

 わたしの家のまわりには、川と水路がたくさんありました。畑のすみの川沿いに生えているタムルンを、父はよく採ってきてお吸い物を作ってくれました。うちの父は料理が上手だったのです。日本で言えばみそ汁のように、おかずの一品として、毎日とは言わないまでも毎週食べていました。

 

 タムルンは緑色の植物で、アサガオのようにツルを巻いて育ちます。豚の骨からつくったスープに入れると、やわらかくておいしいのです。葉の甘さが煮ることでさらに増し、汁にも染み込んでさらにおいしくなります。採りたてですから、新鮮な野菜の味がするのです。

 

 時代とともに、水路は埋め立てられて道路になり、新鮮なタムルンは取れなくなってしまいました。お吸い物には、その代わりに春雨を入れることが多いようです。いまでも、市場に行けばタムルンは手に入るかもしれません。でも、うちの食卓には載ることがなくなりました。