後期(金・3)時間割表へ
    日本倫理思想史IB
  死生観
KUBOTA KOMEI 
窪田 高明
2単位 
1〜4 
後期 
50300302

死生という問題は、人間にとって根本的な問題である。すべての人間は生まれてきて、死んでいくものである。だが、人は自ら生まれてくるわけではない。われわれはたまたま生まれてくるのである。一方、われわれは自らが死ぬ時を知ることはできない。知ることができるときには、われわれは生きている。したがって、死や生にかんする具体的な知識にしたがって判断することはできないのである。
それにも、かかわらず、われわれが生きていくときに、自らの死生をいかに考えるかは重大な要素である。そこで、死生をいかに考えるかという問題の重要性が浮上してくる。日本人が死生の問題をいかに考えてきたかを学ぶことをとおして、自らの死生を考える契機となれば幸いである。
なお、次のホームページで、授業情報が提供されることがあるので、時々参照すること。
http://www.kuis.ac.jp/~kubota/

予定されている内容は、以下のとおり。ただし、今後、構成、内容を一部変更する可能性がある。最初の授業で最終的な授業計画を提示する。

評価方法: 期末の試験

授業計画――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1. 現代人の死生観
  個人的な問題としての死生。病院で死ぬということ。
  死の否定する生、死を含んだ生。
2. 古代の死生観
  生と死の連続性。死と両立する生。(万葉集)
  生と死の分離。死の成立と生の認識。(記紀神話・黄泉の国)
3. 死と再生
  記紀神話と大嘗祭、再生の思想。
  日本人の他界観、山と海。
4. 祖霊信仰と死
  常民という観念
  祖先と家
  祖霊と死
5. 仏教の死生観
  浄土教の死生観、極楽往生の思想。
  浄土教と祖霊との対立。
6. 神道の死生観
  神道は何を信仰しようとするのか。
  神道教義の困難
  苦しむ神、民俗信仰との連続性、再生する霊の再浮上
7. 鎮魂と生
  霊と鎮魂
  欲望と成仏
8. 武士の死生観
  武士の家訓
  武士の変質
  江戸時代の武士
9. 葉隠の思想
  死と武士道
  忍ぶ恋
  美学としての武士道
10. 死の後退
  現世的価値の拡大
  生の思想とその問題
  町民の死生観
11. 管理された死
  近世仏教の世界
  宗教政策と政治制度
  教団の変質
  宗教の変質、近代の宗教の基礎
12. 幕末の死生観
  危機の中の死
13. 明治の死生観
  中江兆民と一年有半
  正岡子規と病牀六尺