言語の最も重要な機能は情報伝達であるが,情報,即ち,意味は個々の発話場面において文の形で伝えられる.そして,文は伝える意味によって様々な形をとると言われる.例えば,The hunter shot the bearとThe hunter shot at the bearとの違いはatの有無だけであるが,これらふたつの文は表わす状況が異なり,それに応じて意味も異なる.したがって,それぞれ使う場面が異なるのは明白であろう.ところが,表わす状況が同じでも,Mary sold a book to JohnとJohn bought a book from Maryのように,談話の主題の違いによって使い分けられる表現形式もある.さらに,Open the door pleaseとCould you get the door for meのように,発話の意図は同じでも,話し手と聞き手の関係によって,当該の場面で使用できるかどうかが決まる場合もある.このように,文の意味は一枚岩ではなく,幾つかの異なる種類の要因が重なりあって構成されている.本講義では,主に英語の文法現象を資料として,文の意味の中でもテクスト形成的機能と対人関係的機能について学ぶ.
|