後期(金・3)時間割表へ
    ラテンアメリカ史概論II
  ラテンアメリカの植民・独立から近現代=コロンブス・ビジネスからヨーロッパとの出会い、そして近代国家の荒波=
SHIDARA TOMOYASU 
設楽 知靖
2単位 
1〜4 
後期 
43400800

後期は、1492年のコロンブスの新大陸到達に象徴される「大航海時代」にはじまる旧世界と新世界の遭遇と衝突(地理上の発見と征服時代)、スペイン領アメリカが形成されたスペイン植民地統治時代ならびにポルトガルのブラジル植民統治時代(両統治とも、1500年から1800年代)、独立革命の時代(1810年代)、国民国家の樹立時代から近代化と従属化の時代(19世紀末から20世紀初頭)、メキシコ革命に代表される社会改革の時代(1910年代)、第二次世界大戦からキューバ革命(1959年)を経ての東西冷戦時代の代理闘争期、そして現代までのラテンアメリカの歴史変遷を域内のトピックスを交えて、リアルタイム解説をしながら授業を進めることとする。

評価方法: 以下の項目を考慮し、総合的に評価する。

(1)課題レポート提出(70%):
   「課題」は事前に10題を提示し、その中から1題を選択して、A4レポート用紙10枚以内にまとめる。
   「評価」は、「理解力」、「洞察力」、「自己表現力」、「創造力」で実施する。
(2)出席率と感想文(リアクション・ペーパー)(30%):
   平常点としての評価とする。

参考文献: 中川文雄・三田千代子編ラテンアメリカ・人と社会新評論
ラテンアメリカ現代史I、II、III山川出版社
恒川恵市比較政治−中南米放送大学教育振興会

  注)毎回、授業時にプリントを配布する。

注意事項: ○前期と後期を継続して履修しなくてはならない科目ではないが、ラテンアメリカ地域を広く理解するために「ラテンアメリカ史概論I」と継続して履修することが望ましい。
○ラテンアメリカ地域文化研究に関心があり、ラテンアメリカに関する卒業論文の執筆を希望する学生諸君、 さらに、政治、経済にも関心をもって将来、ラテンアメリカに関連するビジネス界に進むことを希望する
 学生諸君は、リアルタイムのラテンアメリカを学べるこの科目を是非、履修してほしい。
○さらに、メキシコのグアダラハラ大学およびグアダラハラ自治大学の交換留学、埼玉県費メキシコ留学生、
 日本・メキシコ政府交換留学生の受験を目指す学生諸君には履修を薦めます。

授業計画――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1. 総論:イスパノアメリカ(スペイン領アメリカ)の形成から独立、近代化、現代について。
[I]大航海時代:
   発見と征服の時代(コロンブス・ビジネス、民活によるアメリゴ・ベスプッチの航海、
     カブラルの偶然の発見)
[I]-(1)イベリア世界(スペイン、ポルトガル)の拡大:アメリカ大陸の「発見」と「征服」。

2. [I]-(2)アステカ王国とインカ帝国の滅亡:
         エルナン・コルテスとフランシスコ・ピサロの征服劇。
        「レパルテイミエント制」と「エンコミエンダ制」の導入。    
3. [I]-(3)新大陸の制服をめぐって:
        「軍事的征服」と「精神的征服」の二元性、バルトロメ・デ・ラス・カサス
        「インディアスの破壊に関する簡潔な報告」。
4. [II]植民地時代:スペイン系ラテンアメリカの植民。
[II]-(1)植民地統治機構の確立:
     インディアス枢機会議、アウディエンシア(司法機関)、副王(副王府・副王領)、
     カトリック教会。
5. [II]-(2)植民地経済の発展:
     新大陸貿易「カサ・デ・コントラタシオン(通商院)」の機能、鉱山開発と銀ブーム、
     アシエンダ(大農園)と大土地所有制(ラティフンディスモ)の形成、税制。
6. [II]-(3)植民地社会の形成:
     イベリア世界の移植、人種的身分制社会(混血社会)、植民地文化、
          カトリック教会の役割。
7. [II]-(4)ブラジルの発見・植民・独立:
     カブラル船団の発見、「カピタニア制」による植民、ポルトガル王室のブラジル移住と
     皇太子による独立宣言。
8. [III]イスパノアメリカの独立:
   (1)独立運動の背景:
      反乱する植民地社会、ヨーロッパの啓蒙思想の影響、ナポレオンのイベリア半島侵攻。
   (2)カリブ海域の独立運動:トウーサン・リベルチュールの解放運動とハイチ共和国の樹立。
   (3)ヌエバ・エスパーニャ副王領の独立:メキシコの独立とミゲル・イダルゴ神父。
           モレロス神父。
           
9. [III]-(4)南アメリカの独立:
            シモン・ボリーバル「解放者」の思想と「グラン・コロンビア共和国」、
            ホセ・デ・サン・マルティンとラ・プラタの独立。 
10. [IV]近代化と従属化:
   (1)近代国家の形成:
           カウディージョ(Caudillo)の時代、汎米主義と反米主義、アメリカ合衆国・メキシコ戦争
          (米墨戦争)、モンロー・ドクトリンと米国のラテンアメリカ進出。
11. [IV]-(2)輸出経済の発展と従属構造の確立:
            寡頭支配体制(オリガーキー)の確立、外国(英米)資本の流入、国際分業体制の確立、
            モノカルチャー経済の確立、アメリカ合衆国・スペイン戦争とキューバの独立、
            パナマの独立と「米・パ運河条約」。 
[IV]-(3)欧米化政策とヨーロッパ新移民の流入:ラ・プラタ地域と「ユーロ・アメリカ」の形成。
12. [V]20世紀のラテンアメリカ:
  (1)国民国家の形成とナショナリズム:
         メキシコ革命(1910年)、米国の膨張主義と反米ナショナリズム、世界恐慌(1930年)と
         ラテンアメリカ、モノカルチャー輸出経済の破綻と輸入代替工業化政策。  
13. [V]-(2)東西冷戦体制とラテンアメリカ:
           ポピュリズム政権の誕生、カストロとキューバ革命、「キューバ危機」(米・ソ対立)、
           チリ革命(アジェンデ社会主義政権の崩壊)、中米紛争の構図。
14. [V]-(3)1980年代の危機と民主化:
      累積責務と経済危機、米軍のパナマ侵攻と東欧改革、ネオリベラルズムと
            グローバル化、経済統合も推移(NAFTA,MERCOSUR,CACM,CARICOM,CANから
            FTAA,ALBA,UNASURそしてラテンアメリカ連合へ)。
      「中道左派政権」とポピュリズムの回帰、現代ラテンアメリカ政治・経済ブロックの変化。
15. 統括:
(1)ラテンアメリカの歴史研究・地域・文化研究について。
(2)「日本と一度も戦ったことのない地域」を大切な21世紀のパートナーとして。
(3)後期レポート提出要領について:テーマ選択、レポート作成要領、参考図書文献等。