後期(水・4)時間割表へ
    民法概論II
  財産法、経済法(外部不経済の問題)
TAKAHASHI AKIHIRO 
高橋 明弘
2単位 
1〜4 
後期 
50405100

 この講座では、自由市場経済において、個人が財産を自由に使用し、収益をあげて、処分(生産し流通)し得る法制度−財産権の私的側面−について、学びます。資本主義経済社会は、このような財産の私的側面保護法(民法)を基礎に形成されています。
 しかし、現代社会の法律問題は、財産権の私的側面が強調されすぎるあまりに、経済独占、労働、知的財産および自然・社会環境という各々の分野において生じる民事法上の諸請求(以下では環境問題という)として現れる点を特徴とします。
 民法は、財産の所有者が自由に財産を使用・収益・処分する権利を有するとしています(民法206条)が、どのようなことでもできると規定してはいません。にもかかわらず、なぜ、かような環境問題が発生し、迅速な解決も根絶も図られないのでしょうか。
 この講座では、関係する各種法律(とくに社会法分野に属する独占禁止法)およびその条文、経済学そして産業組織論の視点から、財産権を分析し、環境問題発生の法的原因(日本において財産権の社会的側面の欠如)を明らかにして、21世紀にあり得べき財産権について検討したいと思います。

評価方法:  後期末試験80%および平常点20%を総合して評価したいと思います。第1回目のガイダンスにおいて、履修生の意見を尊重して相談しつつ、成績評価方法を決定したいと思います。

テキスト名: 山川一陽『財産法を学ぶ』法学書院2005
コンパクト・ポケット六法岩波・有斐閣2009

  1六法については、憲法、民法、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律、特許法、著作権法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法、商法、会社法などの法律を収録しているものを購入し、講義に必ず携帯すること。
2参考文献については、講義の際に紹介します。

注意事項: 1授業開始時には、携帯電話の電源スイッチをOFFにしておくこと。
2その他については、講義の初回に皆さんと相談して決定します。
3配布したレジメについては、ファイルして綴り、講義の際には、必ず持参して下さい。

授業計画――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1. 1前期試験の講評 2民法概論IIの講義内容の説明 3契約の成立要件の確認〔テキスト第4講P67〜71、第2講P9〜17・P23〜30〕
2. 契約の成立について解説します。1契約成立要件の検討(典型契約13種類)〔第5講P119〜148〕 2契約の有効要件〔第4講P76〜101、第2講P10〜17〕 
3. 財産権の発生・変更・移転・消滅(所有権の絶対性)について解説します。1民法上の権利の客体 2物権法定主義 3契約の成立と目的物の移転〔第3講P31〜32、P44〕
4. 公示の原則と公信の原則について解説します。 1不動産の売買取引(物権変動)と登記について(民法176条と177条)〔第3講P33〜42〕 2動産の売買取引(物権変動)と引渡し(民法178条)〔第3講P45〜51〕
5. 権利の実現について解説します。1弁済 2同時履行の抗弁権 3債権者代位権 4詐害行為取消権〔第4P74〜76、第6講P175〜181〕
6. 売買契約をめぐって生じる問題を経済価値および費用負担の分配の視点から検討します。1原始不能〔第4講P69〕 2後発不能のうち危険負担〔第4講P72〜73〕と履行不能〔第7講P189〕
7. 売買契約をめぐって生じる問題を経済価値および費用負担の分配の視点から検討します。1売主の担保責任(瑕疵担保)〔第5講P125〜126〕と不完全履行〔第7講P190〕 2履行遅滞〔第7講P185〜188〕 3契約解除〔第4講P102〜105〕
8. 1人的担保制度(保証・連帯保証・根保証・身元保証) 2物的担保制度(抵当権、根抵当権、質権、譲渡担保など)〔第6講P165〜168〕
9. 1催告の抗弁権と検索の抗弁権 2弁済(代物弁済含む)と相殺〔第8講P213〜230〕3時効(取得時効・消滅時効)〔第4講P106〜112〕
10. 1不法行為責任(一般的不法行為と特殊な不法行為)の成立要件、過失、責任、時効〔第7講P195〜212〕 2外部不経済(私的独占と不当な取引制限)の問題序章(外部不経済の発生原因)−財産権のもつ諸機能性を法的根拠に導かれる各種法律の目的および保護法益の観点から、経済政策・独占禁止政策・労働政策・知的財産政策・社会福祉政策の関係を明らかにして、格差社会是正のためのあり得べき政策を検討します−。
11. 外部不経済(私的独占と不当な取引制限)について経済学および産業組織論の基礎理論を解説します。
12. 独占禁止法を理解するための基礎を解説します。1条文の構造および構成(要件-効果の関係) 2競争概念 3私的独占の構成要件など 
13. 私的独占と不当な取引制限の問題について解説します。1私的独占 2不当な取引制限  
14. 私的独占と不当な取引制限に関する審決・判例を使用して法的判断過程−要件効果⇒法解釈⇒事実認定(要件事実の確定)⇒法の適用⇒法的結論−を検討する。 
15. 後期授業のまとめを行って後期末試験について説明し、民法概論の年間講義を終了します。
※講義の進捗状況や履修生の理解度に応じて、講義予定を変更する場合があります。