本講座「国際社会が見えてくる」は、毎回専門分野の異なる教員を講師に迎え、さまざまな角度から「共通のテーマ」について考えてゆくオムニバス形式の講座(12回の連続講座)です。 この講座のねらいは、(1)単なる知識の吸収ではなく、政治学、経済学、国際関係論、歴史学など様々な視点から、現在私たちが直面している問題を読み解き、その原因を明らかにしてゆくことにあります。また(2)この講座では、本学の専任教員が毎回講師として登場しますので、各教員の個性や専門分野を知る良い機会になります。さらに(3)4月に入学したばかりの学生諸君にとって、2年次からの「研究プログラム」の選択に際し、自分がどの研究プログラムを履修したらよいのか?を考えるきっかけを与えてくれます。 講座の共通テーマは、「‘グローカル化’する国際社会を考える」です。皆さんは、「グローカリゼーション」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?「国際社会」とは、「国」と「国」が基本単位となって交際する、「国際」=インターナショナル(international)」な世界ですが、それだけではありません。 現在の国際社会は、交通・輸送・情報伝達手段の発達と市場経済の世界的拡大に伴い、地球的規模でカネ・モノ・ヒト・情報が行き交い、世界の各地域・各国間の相互依存性が増大して、物理的にも意識的にも世界が一体化してゆく状況が生じています。同時に、深刻化する環境汚染、人口爆発、食糧、エネルギー、戦争、テロ、貧困、エイズ、経済格差、国境を越える移民・難民の増大などの諸問題を国家の枠組みを越えた、地球市民的な視点に立って解決してゆこうという意識や行動も進展しています。しかし一方で、グローバリゼーション(globalization)を押し進めるアメリカのような覇権国家からの政治、経済、文化の侵入に対し、自分たちの文化の混乱や無秩序化への不安から、自国の民族的アイデンティティや伝統文化を守ろうとする活動が世界各地に生じています。このように、グローバリゼーションの進展は世界中に大きなメリットをもたらすと同時に、ローカル(地域的)な次元から反発や抵抗を呼び起こし、しばしば両者の間にはテロリズムのような軋轢や衝突を生み出します。こうした「グローバリゼーション」(globalization)と「ローカリゼーション」(localization)という2つの潮流が同時並存している状態を「グローカリゼーション」(glocalization)と呼びます。 このように21世紀の「国際社会」は、「インターナショナル」な世界に対して、グローバル化とローカル化という二つの波が押し寄せ、ますます複雑な様相を呈しています。では「グローカル化」する現在の国際社会には、どのような問題が存在し、私たちはそれをどのように理解していったら良いのでしょうか? この問いに対する答えを得る上で皆さんの一助になるようにとの思いから、本学の専任教員が『国際社会が見えてくる』というテキストを作成しました。このテキストは、各教員が自分の専門分野から見て「グローカル化」する国際社会を理解する上で重要と考えるテーマを取り上げて、簡潔かつ平易に解説したものです。各章には、「設問」や「参考文献」も記載されています。またこのテキストの第2部では、本学で開講されている13のプログラムの中で国際関係に関する4つのプログラムでは何が学べるのか、それを将来どのように活かしてゆけるのか?について、分かり易く説明してあります。将来、国際社会で活躍したいと思う学生諸君は積極的に履修することをお薦めします。
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