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 古代ギリシア以来、国家についてさまざまに論じられてきたことは事実であるが、現在の我々がイメージする「国家」と古代の国家とはかなり異なっている。現代の国家は、古代の「都市国家」でも中世的「帝国」でもなく、その歴史はそれほど長いものではない。ヨーロッパに源流を持つ「近代国家」は、主権と領土(国境)と国民からなる「主権国家」、「領域国家」、「国民国家」である。ところが、その近代国家は、今、EU統合に見られるように、その発祥の地において新たな展開を見せ始めている。
 また、冷戦構造の終焉は、イデオロギーによる国家統合を危うくし、各地で「民族紛争」「宗教紛争」を引き起こしている。また、一極化したと言われる冷戦後の世界で支配力を強めたアメリカは、他の国を「悪の帝国」とか「悪の枢軸」などと呼んで非難し、武力攻撃さえ辞さない姿勢を見せている。果たして国家に「良い国家」と「悪い国家」があるのだろうか。そもそも、国家の正当性の根拠はどこにあるのだろうか。こうした問題を考えるために、本講では、できるだけ多くの生の現実に当たることで、「国家」をめぐるさまざまな現状を把握することに努めたい。

評価方法:  毎回講義の内容について小レポートを書いてもらう予定。これが一種の出席点となる。最後に、授業で触れた問題のいずれかに焦点を当てて、現代国家の問題についてのレポートを書いてもらう。

テキスト名: 神田外語大学国際社会が見えてくるペリカン社2009

参考文献: 青木一能他国家のゆくえ芦書房2001

   これ以外にも、毎回参考文献をあげるので、レポートのためにも早めに読んでいくこと。

注意事項:  欠席があまり多い場合には最後のレポートも受け取れない場合がある。授業計画は予定であり、新しいトピックも取り上げていきたいので、順序、内容とも変更される可能性がある。

授業計画――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1. はじめに:オリエンテーション
2. 近代国家の機能と特徴:
ヨーロッパ的近代国家の理念を探る。「日本国」という国家について考える。
3. 文明の対決:ビデオ
非ヨーロッパ世界の状況、「ことばと国家」について考える。
4. グローバリゼーション(1):グローバリズムとナショナリズム
グローバル化の趨勢が「国家」に与える影響について考える。
5. グローバリゼーション(2):国際結婚
人の移動にともなう問題ついて考える。
6. グローバリゼーション(3):国際機関
国際経済機関、NGOの役割について考える。
7. リージョナリズム:地域統合とトランスナショナリズム
各地のリージョナリズムの実態を探る。
8. 安全保障とリスク管理:緊急事態法とテロリズム
国内問題、国際問題という区別におさまらない諸問題について考える。
9. アメリカ:
一極化した世界における超大国アメリカ(帝国)について考える。
10. ヨーロッパ:
EU統合の表と裏について考える。
11. 中国とアジア:
社会主義と市場経済、アジア型民主主義について考える。
12. アフリカ:
「架空国家」と呼ばれるアフリカの現状について考える。
13. まとめ:
21世紀国家の問題を考える。