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    民族と文化I(a)B
  チベット世界入門
MATSUMOTO TAKAAKI 
松本 高明
2単位 
1〜4 
前期 
50302302

 チベット世界は標高2000m以上の高原地帯に広がっており、ユーラシア大陸の中央に位置するまさに「禁断の地」であった。
 この世界は一見孤立しているかのごとくであるが、その文化的広がりはインド・ネパールはもとより、中国・モンゴルにまで及び、インド世界や中国世界との絶え間ない交流の中で互いに影響し合って成立してきたものである。そして物質万能の現代と一線を画したチベット世界の有り様は、現代においても人を惹き付けて已まない。
 本講座では「特殊なるチベット」と「特殊でないチベット」を軸に、「チベット世界への手掛かり」を学生諸氏の心の中に作ることを目的としたい。
 なお本講座「民族と文化(a)」は、説明や講義内での進め方に若干の違いは出るものの、内容的には(a)Aと(a)Bは同じ趣旨に於いて進めるものとする。

評価方法: 出席及び課題レポート(小レポート3回、期末1回)による。比率は40:60

参考文献: 山口瑞鳳チベット(上・下)東大出版会1988
D.スネルグローブ/H.リチャードソンチベット文化史春秋社1998
チレ・チュジャチベット 歴史と文化東方書店1999
Tsepon W.B.Shakabpa, Tibet:A Political History, Yale Univ. Press, 1967
A.T.グルンフェルド現代チベットの歩み東方書店1994
西川一三秘境西域八年の潜行中公文庫1990
松本高明チベット問題と中国アジア政経学会1996

  講義資料・参考文献については、講義において適宜配布・紹介するものとする。

注意事項: 資料配付はmoodle上にて行うものとする。(講義に先立って各自ダウンロードもしくは印刷しておいて欲しい)

授業計画――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1. 序:チベット世界へのアプローチ

(序-1) 視覚教材その他によるチベット世界の体験。まずはイメージ作り。
    「秘境、禁断の土地、聖地…まずは興味を持とう」
2. (序-2) チベットをめぐる昨今の動き
    「宗教、文化、民族、独立…知っていますか?」
     (小レポート 第1回目)
3. チベットの生活
1.地理的概況とその文化的特徴

(1-1) 高原地帯の農牧生活
    「地理区分、生活の基本的サイクル…富士山頂上と同じ高さでの生活」
4. (1-2) 農牧生活の習慣
    「服装、食事…『かわいい』だけではない。合理的な知恵である。」
5. (1-3) 生活の掟
    「冠婚葬祭。…とても豊かな精神性を持っていることに気づこう。」
6. (1-4) コミュニケーション
    「言語、経済、交通…社会的コミュニケーションの見地から考えよう。」
     (小レポート 第2回目)
7. 2.歴史から学ぶチベット

(2-1) 古王朝
    「大チベット意識を作り上げたソンツェン・ガンポ…中国との関係の原点」
8. (2-2) 氏族教団
    「僧俗二元体制の起源…チベットは宗教が政治を指導する世界だった。」
9. (2-3) 転生活仏教団
    「ダライ・ラマ政権の成立…独特の継承体系と、武力は外部調達?」
10. (2-4) 近代中国とチベット(その1)
    「清王朝とチベット…相互の補完関係は意外に深い?」
11. (2-5) 近代中国とチベット(その2)
    「東アジア世界の変動と翻弄されるチベット…相互の信頼が破れたとき」
     (小レポート 第3回目)
12. 3.日本人とチベット

(3-1) 近代日本の仏教復興運動とチベット(1)
    「河口慧海…近代チベットに足を踏み入れた初の日本人」
13. (3-2) 近代日本の仏教復興運動とチベット(2)
    「多田等観・青木文教…交換留学生からチベット学の開祖へ」
14. (3-3) 宗教的連係から戦略的連係へ
    「矢島保次郎と成田安輝…ダライラマの日本イメージと東アジア」
15. (3-4) 戦略的重要性を見いだした日本と鎖国状態のチベット
    「木村肥佐生・西川一三…戦時下日本の大陸政策の一翼を担って」