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    言語哲学I
  rhetoricと哲学
HIKASA KATSUSHI 
樋笠 勝士
2単位 
1〜4 
前期 
50100600

「説得」という言葉を聞くと何を思い浮かべるでしょうか。政治家が選挙で自己の政策を訴えている風景でしょうか。弁護士が陪審員に向かって被告の無罪を上手に表現している場面でしょうか。或いは、恋をしている人がなんとか恋の相手を自分のものにしたくて頑張ってる風情でしょうか。
 これらはどれも、西洋文化の「弁論術」乃至「修辞学」、つまりrhetoricの課題なのです。本講座では、このレトリックを主題にして論じたいと思います。
 ところでレトリックは多様です。言葉で相手を納得させたい場面が中心ですが、ノンヴァーバル・コミュニケーションでも、同種のものはあります。加えて、語る言葉に等しい存在として「作品」というものも、説得の媒体になります。
 レトリックの現実とその文化は古代からありますが、学問化したのはアリストテレスです。彼がレトリックを「制作学」の一種とし、そこで「作品」概念を提示しました。その後、西洋近代では、その伝統に従って、説得の方法論が伝わりました。かなり面白いものが伝わってますが、前期は、その歴史的伝統的局面を論じたいと思います。

評価方法: 試験、出席点、平常点で総合評価します。

テキスト名: アリストテレス弁論術岩波文庫

  その他の参考書は教室にて紹介します。

授業計画――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1. 講義の案内
2. 哲学と言語学と言語哲学の共通点と相違点
3. 言語哲学の主題一覧
4. レトリックの始まり・・・古代シチリアの社会
5. レトリックへの反省・・・哲学の始まりと共に
6. プラトンとレトリック・・・レトリック批判
7. ソフィストの技術
8. アリストテレスの思索・・・「制作学」の意味
9. アリストテレスの思索・・・「作品」概念の提案
10. 『弁論術』における「言葉の力」の価値
11. 『弁論術』における「説得」の多様性
12. 『弁論術』の思想的展開
13. 「弁論術」から「修辞学」へ
14. rhetoricの多様化・「作品」概念の展開
15. まとめ