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    スペイン現代史I
  19・20世紀の近代化プロセス
TOKADO KAZUEI 
戸門 一衛
2単位 
2〜4 
前期 
43400300

ヨーロッパの「周辺」としての南欧スペインは、20世紀を迎えた時、近代化が最も遅れた社会であった。社会的矛盾の根は深く、その改革は大きな困難に直面した。複雑な利害関係は、ついにはスペイン内戦(1936−39年)という、国民が暴力で敵対する悲劇を生んでしまった。
内戦終了後に成立したフランコ軍事独裁体制は40年近く続いた。しかし、1975年に独裁体制が崩壊してから、スペインは目覚しい変貌を遂げた。それは民主化のプロセスの一環として推進され、中央集権から地方分権体制への移行、社会福祉国家の形成、貧富の差の解消、機会均等原則の浸透、女性の意識変化、少子高齢化などの質的変化に結びついた。
このようなスペインの近代化の歩みを、政治の変遷・社会の変化を中心に解明するのが、この講義の目的である。
スペインが社会の近代化に向けて直面した様々な側面をケーススタディーとして分析するが、講義の最終目標はスペインの個別事情に詳しくなることではなく、相対的に遅れた国々が近代化を進める上で直面せざるを得ない問題は何か、克服しなければならない課題は何かといった普遍的なテーマについて熟考することである。スペインに関する地域研究が投影するimplication(含意、意義)について、常に問題提起を行いたい。

評価方法: 出席点 約20点、ミニレポート約3回(各5点)15点、筆記試験 約65点、の計100点で評価する。

テキスト名: テキストや参考文献は授業中に指示し、適宜プリントを配布する。下記は、スペイン現代史の勉強に有益な参考文献である。
立石・関・中川・中塚『スペインの歴史』昭和堂、1998年
立石博高『スペイン・ポルトガル史』山川出版社、2000年
戸門一衛『スペインの実験』朝日新聞社、1994年
楠・タマメス・戸門・深澤 『スペイン現代史』大修館書店、199年
碇順治編『現代スペインの歴史』彩流社、2005年

注意事項: 日本、アジア、ラテンアメリカなど他の地域や国々との比較分析も試みるので、政治や社会問題に関心のある、スペイン語学科以外の学生にも受講を勧める。基本的に日本語と英語の文献を使用するので、スペイン語力は問わない。

授業計画――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1. スペイン地域研究の意義
2. 歴史的にみたスペイン社会の特徴
3. 困難を極める近代化:前進と後退、改革と挫折
4. 第二共和政の近代改革
5. スペイン内戦の構図
6. スペイン内戦の実態
7. フランコ独裁体制の成立
8. 独裁体制を取り巻く国際環境
9. 封鎖経済体制から開放経済体制へ:高度経済成長
10. 反体制運動の高揚
11. バスク問題:テロリズム
12. フランコ独裁体制の崩壊
13. 民主化への胎動