2002年に誕生したEUの共通通貨ユーロはドルと並ぶ世界の基軸通貨となった。マルク、フラン、ペセタなど慣れ親しんだ国内通貨を捨てて、なぜ共通通貨を採用するのか。そのメリットは何か。デメリットはないのか。複数の国々が単一通貨を採用し、金融政策を司る意味は何なのか。話す言葉や生活習慣が異なり、経済発展水準も異なる国々が一つの通貨で結ばれるという事実は何を意味するのだろうか。税制や財政政策は各国の主権に置かれ続けている中で共通金融政策の適切な舵取りは可能なのだろうか。以上のような問題意識を念頭に置きつつ、欧州経済通貨統合について考察する。 さらに、加盟国数が増大し、機能面でも複雑になったEUの意思決定プロセスや政策に欧州市民の意思を反映させるために、EUは「憲法」を成立させようとしてきたが、フランスやオランダにおける批准国民投票で否決されてしまった。改めて「改革条約」として簡素化されて提示されているが、その内容は何か。また、欧州には大量の移民が押し寄せている。欧州がいかなる移民政策をとっているのかについも考察したい。 欧州が直面している重要テーマにつき、このような問いかけをし、その解答を模索するのが本講義の目的である。
|