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大河ラプラタが注ぐ河口に、「南米のパリ」と呼ばれる、眠ることを知らない大都会ブエノスアイレスがある。夢と富を託して、膨大数のヨーロッパ系移民がようやくの思いでたどり着いた港街だ。街の中心に独立の象徴「五月広場」があり、正面には大統領官邸「カサ・ロサーダ」がラプラタの陽光に光り輝いている。そのバルコニーから身を乗り出すようにして、「デスカミサードス!」と民衆に向かって叫ぶ、エビータの痛々しいまでの姿がよみがえる。そしてその姿は、エビータを彷彿とさせると報じるテレビニュースの画面に流れる次期大統領クリスティーナの姿と重なる。 本書は、アルゼンチン共和国のフアン・ドミンゴ・ペロン大統領の妻として、そして「エバ・ペロン財団」を組織して救貧活動を展開し、陰になり日向になって夫のペロンを支え、多くの国民から「聖女エビータ」として慕われ、崇拝されたエバ・ペロンの生涯を描いたものである。私生児として生まれたエビータは、貧困からはいあがり、ファースト・レディにまで上りつめ、33歳の若さで癌に蝕まれたすえに急逝した。そのみじかくも激しく人生を駆け抜けていった姿は、マドンナ主演の映画『エビータ』でもお馴染みであろう。何がエビータをして貧しい人々のための闘いに駆り立てたのか。アルゼンチンの現代史を紐解き、ペロンを支持するペロニスタの心情に触れながら、心に響く本書を共に堪能したい。本体560円。
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