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    本を読む−12
  
YAGINUMA KOICHIRO 
柳沼 孝一郎
1単位 
1〜4 
前期 
30005112

「本を読む」は、一冊の本を読み通すことを通じて、本を読む面白さ、奥深さを体験し、読書する習慣を身につけてもらうことを企図したものである。さまざまな分野の教員が自らの専門の見地から、学生に読んでもらいたい本(新書等)を推薦している。本を推薦した教員は、本に書かれていることを解説するというよりも、読者自身が感動したり気づいたりしたことを、対話によって引き出し、考えを深める手助けをする。この授業を契機として、これからの読書経験を豊かなものにしてほしい。

評価方法: 面談とレポート(1200字程度、採点後返却する)。

テキスト名: ジョン・バーンズ(牛島信明訳)エビータ新潮社・新潮文庫1997

   大河ラプラタが注ぐ河口に、「南米のパリ」と呼ばれる、眠ることを知らない大都会ブエノスアイレスがある。夢と富を託して、膨大数のヨーロッパ系移民がようやくの思いでたどり着いた港街だ。街の中心に独立の象徴「五月広場」があり、正面には大統領官邸「カサ・ロサーダ」がラプラタの陽光に光り輝いている。そのバルコニーから身を乗り出すようにして、「デスカミサードス!」と民衆に向かって叫ぶ、エビータの痛々しいまでの姿がよみがえる。そしてその姿は、エビータを彷彿とさせると報じるテレビニュースの画面に流れる次期大統領クリスティーナの姿と重なる。
 本書は、アルゼンチン共和国のフアン・ドミンゴ・ペロン大統領の妻として、そして「エバ・ペロン財団」を組織して救貧活動を展開し、陰になり日向になって夫のペロンを支え、多くの国民から「聖女エビータ」として慕われ、崇拝されたエバ・ペロンの生涯を描いたものである。私生児として生まれ、貧困からはいあがり、ファースト・レディにまで上りつめたエビータは、癌に蝕まれたすえに33歳の若さで急逝した。そのみじかくも激しく人生を駆け抜けていった姿は、マドンナ主演の映画『エビータ』でもお馴染みであろう。何がエビータをして貧しい人々のための闘いに駆り立てたのか。アルゼンチンの現代史を紐解き、ペロンを支持するペロニスタの心情に触れながら、心に響く本書を共に堪能したい。本体560円。

注意事項: この授業は、教室で定期的に行われるものではなく、本を推薦した教員と受講生との間で個別的に行われる。受講希望者に対する履修説明会を学期始めに開催する。希望者多数の場合は人数制限を行う。課題本を昨年度以前に読んだ者の履修は認めない。
授業は、柳沼個人研究室(1号館3階)で行うが、具体的には説明会の会場で決定する。同時に、「メーリングリスト」を作成し、以降は連絡網によって周知・案内する。
履修制限:特に制限しない。