大学院(金・1)時間割表へ
    言語文化研究
  
SAITO TAKEO 
斎藤 武生
4単位 
  
通年 
91302010

 言語文化研究が問題とするのは「言語の表れ」としての言語表現である。言語表現そのものを言語文化遺産と見て、その通時的研究をめざすとともに、言語表現に隠された「目に見えない世界」に人間の文化的営みを見て共時的な研究をめざすのが言語文化研究である。たとえば、日本人が「(〜から)足を洗う」と表現するところを英語圏では wash one's hands (of 〜) という。この違いを説明するのに、托鉢僧や聖書のピラトの故事を問題にするのは通時的・文献学的な研究の例である。一方、この表現の違いを共時的な視点から分析し、理論的に説明しようとするのがもう一つの言語文化研究のかたちである。言語表現を証拠として、手足についての見方・考え方をその文化圏の問題として解き明かすことになる。
 また、たとえば、信じがたい光景を目にしたとき、日本人は「(自分の)目を疑った」という言い方をするが、英語圏では cannot believe one's eyes と表現する。ともにクリシェイとしての資格を備えた表現である。「疑う」と「信じられない」という二つの言い方に隠された思考様式の違いをことばの証拠に基づいて解き明かすのが言語文化研究である。さらに、文化遺産としての諺に着目するなら、「百聞は一見に如かず」とSeeing is believing との違いを問題にすることもできる。
 クラスでは、日本語と英語を主たる対象言語として多様な言語文化現象を取り上げるが、そのなかで、日本語教育や英語教育とのかかわりを含め、いろいろな問題を考えていくことにしたい。

評価方法: 評価方法:  授業への参加度とレポート。

テキスト:  参考文献とともに授業時に指示する。