1. |
武士という存在の特殊性 日本人にとっては当然のものと思える武家政権の特殊性を考える。 |
2. |
近世以前の武士 武士の発生。武士の地位向上。武家政権の成立。武家法の思想。政治権力の分散。 |
3. |
近世の武士の矛盾 江戸時代になると武士は政治権力を完全に掌握したが、それは同時に戦闘者としての武士による戦闘の否定という異常な事態をもたらした。もっとも安定した武家政権がみずからの本質を否定するという矛盾を考える。 |
4. |
士道論の成立 統治者としての性格を前面に押し出した新しい武士道論を士道論という。士道論は、道徳的な人間を理想とする儒学を基礎として、身分としての武士を正当化しようとする。 |
5. |
武士道の自覚 士道論に対して、武士の根拠が戦闘者としての武士にあることにこだわり続ける思想を武士道論という。その代表は『葉隠』である。『葉隠』の武士道論は、自己を戦闘者であると認識しつつ、一方では戦闘なき時代を生きる思想である。 |
6. |
武士の矛盾−−赤穂事件 歌舞伎などの忠臣蔵で有名な赤穂事件は、近世の武士の抱えている根本的な矛盾が、主君の刃傷という事件を契機としてあらわな形で噴出した事件であった。人々はそれをどう考え、どう評価しようとしたのか。近世武士の矛盾を具体的な事件をとおして検証する。 |
7. |
武家支配の破綻 近世の武家支配の矛盾は、武士階級の貧窮化をもたらす。貧窮化への対応は、まずは倹約という形をとるが、やがて藩の財政再建の努力という形をとる。それを代表する上杉鷹山の事例を考え、その成果と限界を考える。 |
8. |
武士の自己否定 武士が支配する社会の矛盾を基本的に解決するためには、武家支配そのものを廃棄するしかない。その自覚は19世紀になって急速に進行する。しかし、近世的な武家支配の体制を否定するものも武士であった。吉田松陰など武家政治の改革が武家政治の否定に至る幕末の思想展開を学ぶ。 |
9. |
武士の解体過程 武士は戦闘力を独占した支配者でありながら、大規模な戦闘を行うことなく解体した。その解体の過程を、明治政府の施策の展開に即して理解する。 |
10. |
近世の武士道−−新渡戸稲造 現在の武士道への関心は、新渡戸稲造の著書『武士道』によるところが大きい。しかし、新渡戸の武士道は、実際の武士道とはまったく異なる思想であった。その特質と背景、さらにはその現代への影響を考える。 |