後期(金・3)時間割表へ
    中国思想概論II
  
KUBOTA YOSHITAKE 
久保田 善丈
2単位 
1〜4 
後期 
42303400

前期の「中国思想概論1」を受講しておくことが望ましいが、後期から受講しても問題はないと考えている。議論としていくのは、こういうことだ。日本の中国研究は、西洋中心主義的、植民地主義的な中国イメージを克服しようと努力を重ねてきたが、そこでは西洋中心主義的まなざしを批判することに力点が置かれ、その結果、近現代代中国はいつでも西洋的、植民地主義的、近代的まなざしの対象、すなわち、「見られる中国」であり、彼らがその近代的まなざしを内面化し、そのまなざしをもって自文化や他文化を他者化することでその主体を構築していく可能性については、それが重く見られることはなかったのである―。この授業では、西洋中心主義的なまなざしを批判する理論的なトレーニング(ポストコロニアル理論、とくにオリエンタリズム批判)を進める一方で、非西洋の側、すなわち「見られる」側とされた彼らが、そのまななざしを内面化していくこと、そして、それによって自身の文化と誰かの文化を同じように野蛮化、後進化していくこと、そのようにして彼らが主体を構築していくことを確認する。つまり、近現代中国を「まなざしの主体」として捉えていく。そしてそれは、「中国自身のオリエンタリズム」や漢民族中心主義的「帝国化」の契機にアプローチする試みでもあり、「近代的まなざしの行方」を探ることを意味するのである。以上のような問題意識を受講者とともに検証していくこと、そのために近現代中国における啓蒙的メディア(大衆の存在を前提とする新聞雑誌等)をポストコロニアル批評の手法によって読み解いていくこと、同時に現代中国の知識人がこのような問題をどう捉えているかということに目を配っていく。最終的には「見られる」中国が「見る」中国でもあり、そして今問題にしなければならないのは、「見せる」中国であるという可能性を見出したい。

評価方法: 授業毎のミニレポートおよび、レポートによって評価する。レポートでは、授業を通じて身に付けた方法によって、自ら選んだテキストあるいは図像・映像に対応することになる。

テキスト名: 特定のテキストは使用せず参考文献を随時提示。必要な資料はその都度コピー配布。

授業計画――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1. 序論―「まなざしの対象」としての近現代中国
「オリエンタリズム」の構造
自身あるいは身の回りの「オリエンタリズム」探し
2. オリエンタリズム批判の陥穽
「近代的まなざしの終着点」としての日本
「まなざしの対象」としての中国―主体性の隠蔽
3. 「まなざし」の主体としての近代中国
4. 奇妙な世界と奇妙な中国―『点石斎画報』の世界
自己イメージの動揺
5. 近代中国の「オリエンタリズム」<1>―雑誌『蒙学報』の世界
『蒙学報』について
近代日本の少年雑誌との比較(『少年世界』)
6. 分析―「西洋の万能性」「欠如としての中国」
事例演習
7. 近代中国の「オリエンタリズム」<2>―『杭州白話報』の世界
『杭州白話報』について
『杭州白話報』の自他イメージ(「地理問答」「俗語指謬」)
8. 分析―「他者」としての大衆イメージの意味するところ
事例演習
9. 現代日本の「まなざし」<1>
ホモソーシャルとしてのアジア主義的世界
アジア主義的欲望とマッチョイズム
10. 現代日本の「まなざし」<2>
ノスタルジアと「なつかしいアジア」
11. 現代日本の「まなざし」<3>
アジアを「笑う」感性
12. 現代中国における「ポストコロニアリズム」
13. 現代中国の「オリエンタリズム」<1>―中国の現代思想
事例演習(課題の設定/分析/結論あるいは展望)
14. 現代中国の「オリエンタリズム」<2>―「見られる、見る、見せる」中国
中国語圏における研究の状況と中国映画―東方主義・後植民地主義
15. まとめと展望―「オリエンタリズム」の行方
「オリエンタリズム」の共有と「国民化」
「オリエンタリズム批判」に対する批判をめぐって