後期 集中講義へ
    本を読む−22
  文化を描く試み:池上永一の『風車祭(カジマヤー)』を手がかりに
OKUSHIMA MIKA 
奥島 美夏
1単位 
1〜4 
後期 
30005122

「本を読む」は、一冊の本を読み通すことを通じて本を読む面白さ、奥深さを体験し、読書する習慣を身につけてもらうことを企図したものである。さまざまな分野の教員が自らの専門の見地から、学生に読んでもらいたい本を推薦している。本を推薦した教員は、本に書かれていることを解説するというよりも、読者自身が感動したり気づいたりしたことを、対話によって引き出し、考えを深める手助けをする。この授業を契機として、これからの読書経験を豊かなものにしてほしい。

評価方法: 面談とレポート(1200字程度、採点後返却する)。希望者は、自分自身ないし自分の学ぶ「文化」について短いエッセイか創作に挑戦してみよう。

テキスト名: 池上永一風車祭(カジマヤー)文春文庫1997
池上永一バガージマヌパナス:わが島の話文春文庫1998

   外国語を専攻する学生なら誰でも、言語を学ぶことはさまさまな民族の思いや文化を追体験することだと知っている。世界的なグローバル化が進行する現代社会では、外国人市民・帰国子女・国際結婚も当たり前の現象となり、日々の生活ですらさまざまな文化が出会い、ぶつかりあう。あなたはどんな文化に立脚しているだろう?それは果たしてあなたの家族や友人たちと同じなのか?「日本人」と「外国人」はどれほどの違いがあるのだろうか?
 この授業では、日本でも独自の民族文化圏としてしられる沖縄を例として、97歳の祝祭「風車祭」を迎えるオバアや高校生の主人公・武志を取り巻く島の人々と精霊が織り成す現実と信仰世界という舞台を楽しみながら、あなた自身の自文化・異文化についても考えてみよう。多くの人々に理解され共感を得るためには、「文化」とよばれる言語・社会構造・歴史・宗教儀礼・種々の生活習慣などのからみあう総体を取材・研究する第1段階から、その体系からみえてきた人々の生き様や思いを「客観化する」という第2段階の作業が必要になる。どの言語を使い、誰にそれを伝えたいかなどを選ぶ戦略も必要だ。自分の研究課題として、また隣人に自分を伝えるコミュニケーション方法の模索として、「文化を描く」実践をはじめよう。

*上記の本はハードカバー(文芸春秋)も可。『風車祭』の漫画版は不可なので、間違えないこと。沖縄の歴史や民族文化に関する参考文献は授業で随時紹介する。

注意事項: この授業は教室で定期的に行われるものではなく、本を推薦した教員と受講者との間で個別的に行われる。受講希望者に対する履修説明会を学期初めに開催する。希望者多数の場合は人数制限を行う。課題本を昨年度以前に読んだ者の履修は認めない。

奥島研究室:4303号室、(E-mail) okushima@kanda.kuis.ac.jp