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    日本研究
  日本の社会と思想の歴史
KUBOTA KOMEI 
窪田 高明
4単位 
  
通年 
91302000

日本の社会と文化の歴史を広く学ぶことにする。このような広い範囲を対象とするには、中心となる教材が必要であるが、今回は山本七平の著作『日本人とは何か』を採用した。この本は、幕末に生まれた伊達千広(陸奥宗睦の父)の書いた『大勢三転考』を枠組みとして採用し、その枠組みに著者自らの主張を盛り込むという方法で、通史的な記述を実現している。
山本の議論は、自らの主張に基づいて、対象を切り取っており、すべての問題を扱っているわけではない。また、細部において、事実から思考を組み立てるというよりは、自らの視点にしたがって、事実を選んでいく部分はある。学問的な厳密性という観点から疑問を投げかけることもできる。しかし、一方では日本人とは何かという問題を現代的な関心から捉えようとしているとうい意味では評価すべきである。
教科書は4部で約30章に分かれている。授業では毎回1章を取り上げて、その内容を検討していく形で進めていく。
なお、著者の山本七平は独自の視点から評論活動を展開したベストセラーライターで有名な作品に『日本人とユダヤ人』(イザヤ・ベンダサン名義)がある。

なお、『日本人とは何か』の目次は以下のとおり。
プロローグ 『大勢三転考』の日本―伊達千広が描いた歴史観
第1部 「骨の代」から「職の代」へ
日本人とは何か
文字の創造
律令制の成立
神話と伝説の世界
仏教の伝来
〈民主主義〉の奇妙な発生

第2部 「職の代」から「名の代」へ
武家と一夫一婦制
武家革命と日本式法治国家の成立
武家法の特徴
エコノミック・アニマルの出現
下剋上と集団主義の発生
貨幣と契約と組織―中世の終わり

第3部 名の代・西欧の衝撃
土一揆・一向宗・キリシタン
貿易・植民地化・奴隷・典礼問題
オランダ人とイギリス人
「鎖国」は果たしてあったのか
キリシタン思想の影響

第4部 伊達千広の現代(家康の創出した体制
幕藩体制の下で
タテ社会と下剋上
五公五民と藩の経営
幕藩体制下の経済
江戸時代の技術
江戸時代の民衆生活
江戸時代の思想―民間学者の出現と御用思想の危険
現代日本人の原型―宗教批判、無神論、進化論、地動説
現代日本国の原型

エピローグ 明治維新の出発点

評価方法: 一年に2回程度のレポートを課す。

テキスト名: 山本七平日本人とは何か(上下)PHP出版・PHP文庫

  指定した教科書は、PHP出版から単行本のものと文庫本の両方が発売されており、どちらでもかまわないが、当然文庫本の方が安価である。毎回各章を読んでくることが前提だからかならず用意するように。