今年度は『日本書紀』を読む。 もちろん、この大部の書物を読み通すことは不可能である。今回は巻3の「神武天皇」から読み進める。巻11の仁徳天皇の部分まで読むことを一応の目安とするが、こればかりは始めてみないとわからない。 『日本書紀』の1、2巻は神代巻(上・下)であり、この部分にはいわゆる記紀神話と呼ばれる日本の神話が記述されている。それは、きわめて重要で興味深い部分である。しかし、これに続く神武東征以下の記述は、記紀神話ほど語られることがないが、日本の王権、天皇の原像を考える上で、まさるとも劣らない重要な内容をもっている。記紀神話の部分は、日常的な論理を超えた神話的な記述であるのに対し、神武東征以下の記述は神話的な論理とも読めるだろうし、歴史的な論理とも読めるだろう(事実かどうかという問題ではなく)。そのような論理の特質とは何か、人間が自分たちの世界の根源を記述するにはどのような方法があるのか、といったじつに興味深い問題を提起してくる。 もっとも、そのような難しい議論を別にしても、日本の古代がどのような記述で語られているのかを学ぶことは、十分に楽しく、かつ有益な体験だと思われる。
教科書は『日本書紀』(岩波文庫1)を用いる。もし、順調に読み進めることができれば、ついて『日本書紀』(岩波文庫2)を用いる。
授業は、各回ごとに担当部分を指定し、担当者がその内容を紹介し、問題点、疑問点を提起する。その後、その発表をもとに討論を行い、次回以降の授業へ展開していく。
なお、『日本書紀』の現代語訳は下記の参考書をはじめ、講談社学術文庫、日本古典文学全集所収の『日本書紀』で読むことができる。
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