後期(水・4)時間割表へ
    民法概論II
  財産法、経済法(外部不経済の問題)
TAKAHASHI AKIHIRO 
高橋 明弘
2単位 
1〜4 
後期 
50405100

 後期の民法概論は、前期の民法概論で学んだ理論を基礎に、民法の財産・契約編と経済法を講義します。
 まず、物品やサービスの生産および流通を円滑に行うため、さらに社会生活関係を形成するための法制度について学びます。具体的には、売買、労働、賃貸借および消費貸借など契約の成立過程(発生・移転・変更・消滅)について解説します。とくに、物品やサービスの売買契約と賃貸借契約については、契約書のひな型を参照して、法律行為の成立要件と有効要件を確認します。つぎに、権利の実現方法を講義し、その後に、売買契約で障害が生じた場合に、どのように対処し解決するかについて具体例をもって解りやすく講義します。権利の取得・消滅について時効制度を、続いて高度資本主義信用経済を支える担保・保証制度を説明します。
 終盤は、社会生活・経済取引で発生した不法行為の問題をとり上げます。まず、民法上の一般的な不法行為および私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(以下「独占禁止法」という)の基礎理論を説明して、独占禁止法違反の問題(私的独占、不当な取引制限など)を検討します。
 講義の進行途中で、生きた事例として東京のある町で実際に発生した問題をビデオ鑑賞し、「財産権とは何か?」について検討します。最後に、少子化・高齢化社会を迎えるに際して、労働・福祉・まちづくり政策のあり方(社会福祉政策)と資本主義自由市場経済(私的財産制度)のあり方(経済政策)との関係について、検討したいと思います。 

評価方法:  後期末試験、出席、以上の総合評価による。

テキスト名: 未定(改訂中)

注意事項:  講義の進行は、六法の条文を参照しつつ解説する方法をとりますので、履修生は、講義には、六法(ポケット六法、コンパクト六法、その他の六法)の最新版を必ず携帯して下さい。
 民法および経済法に共通する基礎理論は、前期の民法概論で学習しますので、民法概論を履修してなければ、民法概論を履修することはできません。

授業計画――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1. 契約の成立過程(成立・移転・変更・消滅)を学ぶ
  実際に売買契約書および賃貸借契約書の「ひな型」を使用して、契約が有効に成立するための要件を明らかにします。
2. 売買契約の成立と目的物の移転:編2章
3. 不動産(土地・建物)の売買取引と登記:編2章・3章
4. 動産の売買取引と引渡し・占有:編4章
5. 権利の実現(弁済、現実の履行の強制、債権者代理権と債権者取消権):編1章・2章・4章
6. 売買契約をめぐって生じる問題編2章、編4章、編1章
 同時履行の抗弁権および契約の解除について説明します。つぎに、経済価値(労働価値・希少価値)および費用負担の分配の視点から、契約成立前の目的物消滅(原始不能)、契約成立後の目的物消滅(後発不能)についての危険負担と履行不能、履行遅滞、そして不完全履行と瑕疵担保責任という問題の関係について、具体例を示しつつ説明します。
7. 売買契約をめぐって生じる問題編2章、編4章、編1章
 同時履行の抗弁権および契約の解除について説明します。つぎに、経済価値(労働価値・希少価値)および費用負担の分配の視点から、契約成立前の目的物消滅(原始不能)、契約成立後の目的物消滅(後発不能)についての危険負担と履行不能、履行遅滞、そして不完全履行と瑕疵担保責任という問題の関係について、具体例を示しつつ説明します。
8. 時効制度(取得時効、消滅時効):編5章
9. 物的担保制度(抵当権、質権、先取特権、売渡担保、譲渡担保)など:編3章
10. 人的担保制度(保証、連帯保証、根保証、身元保証)、相殺制度:編3章
11. 一般的不法行為(成立要件、過失、責任、時効)、特殊な不法行為:編2章
12. 外部不経済(私的独占、不当な取引制限など)の問題:資料配布
 流通経済・契約と産業組織論・独占禁止法との異同、契約自由の原則を維持確保する視点から競争を導き出して、競争概念を定義し、独占禁止法の基礎理論を学びます。これらの問題については、三共ほかに対するパチンコ技術市場事件、朝日新聞ほか新聞販路事件、マイクロソフト事件などを検討します。
13. ビデオ鑑賞による生きた事例研究
 実際に生じた現代的問題をビデオによって紹介します。問題が発生した原因は何か、この問題に対する従来の利益衡量論の適用は正しいか、すでに破綻しているのではないか、では、新しい理論は何かについて検討する。
14. 経済政策と社会福祉政策
 資本主義的自由市場経済(私的財産権制度)のあり方(経済政策)と労働・福祉・まちづくり政策のあり方(社会福祉政策)とは、相互補完関係にあることを考察します。そして、二つの政策は、現在の日本の社会において、相互補完関係として機能しているのかどうかについて検討します。
15. 後期授業のまとめ、後期末定期試験について説明し、民法概論の一年間の講義を終了します。