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    地域・国際研究講座
  
KATO JOJI 
加藤 譲治・他
2単位 
1〜4 
前期 
50404500

 地域・国際研究講座は、毎回専門分野の異なる教員を講師に迎え、さまざまな角度から「共通のテーマ」について考えてゆくオムニバス形式の講座です。講座のねらいは、多彩な知識を吸収することよりも、政治学、経済学、歴史学など社会科学領域の学問体系の方法論によって問題を読み解いてゆくことを通じて、学生諸君に社会科学の魅力に触れてもらうことにあります。
 この講座は本学の専任教員を中心に毎回異なる教員が講師として登場しますから、学生諸君がそれぞれの教員の個性を知る良い機会です。

2006年度の共通テーマ:激動する世界と日本−−戦後60年をこえて

 21世紀に入って今年で6年目を迎えますが、日本を取り囲む国際環境や日本社会は大きな転換期にさしかかっています。国際面に目を向ければ、9・11同時多発テロ、イラク戦争、自衛隊のイラク派遣、ますます強まるアメリカの単独行動主義、牛肉輸入再開問題、台頭する中国やEU、そして小泉首相の靖国神社参拝をめぐって生じた中国、韓国との歴史認識問題、さらに日本の対途上国支援や国際協力のあり方など様々問題が存在しています。また国内問題に目を向ければ、憲法改正問題、長期化する経済停滞とフリーターやニートと呼ばれる青年問題の深刻化、ストーカー問題や幼女誘拐事件などに見られる社会的弱者に対する事件の頻発、憲法改訂問題、海外からの移民問題、人口の少子化問題など広い分野にわたっていろいろな問題が山積しています。
 私たちはこうした問題をどのように考え、その解決に向けてどのように取り組んでゆくべきなでしょうか?これを考えるにあたり、この講座では、過去を振り返ることで現在を知り、現在を知ることで将来を見据える、つまり戦後60年を簡単に振り返り、それを通じて日本の現状を分析し、日本の将来の進むべき方向を考えたいと思っています。

戦後日本は大きく分けて次の3つの時代に分けることができます。

  戦後改革・戦後復興から55年体制の成立まで
  55年体制からバブル経済崩壊まで
  「失われた年代」そして「小泉政権」の登場

 その間、一貫して国民生活を向上させ、経済発展を達成することが国民的合意として追及されてきました。つまり「経済優先、政治・社会・文化の軽視」という、いびつな「近代化」路線がとられて来たのです。同時に、上記期間中(それは40年間にわたる)に、大多数の国民が共有してきた価値観は、平和主義、平等主義、経済発展でした。それらを総称して「社会民主主義的合意」と呼ぶことにします。
 上記3つの時期は、国際社会の変動に密接にリンクして展開されたことも重要な視点です。すなわち、第2次大戦の終結と朝鮮戦争の勃発、米ソ冷静構造と「核」の支配による「平和」、ベルリンの壁崩壊とグローバル化の進展、がそれであるということになります。もちろん細かく見れば、石油ショックとそれに続く長期のスタグフレーション、そしてアジア諸国やBRICsの目覚しい経済発展などがあげられます。
 昨年、私たちは戦後60年を迎え、過去を振り返る中から、様々な議論が展開されました。そこで提起された重要な問題は、「戦後日本の民主主義システム」は新しい時代の流れや環境諸条件の変化に充分に対応できているのだろうか?もしできていないとすれば、私たちはそれをどのような視点に立って変革してゆくべきなのか?という問題でした。私たちが依拠すべきものは、「社会民主的合意」を基礎にした制度改革か?それとも「福祉破壊、市場万能、海外派兵」を正当化する「構造改革」なのか?、いずれの道を私たちは選択すべきなのか?私たちは現在そのような選択をしてゆく重要な時期にさしかかっているのです。この講座では複数の専任教員の報告とその後の学生諸君との質疑応答を勧めながら、21世紀の日本の選択という重要な問題を一緒に考えて行きます。

 なお、この講座の全体像(各回のテーマと担当教員)は最初の授業の際に紹介します。

評価方法: 出席を兼ねて、毎回授業の最後に担当講師のレクチャーについて感想文を提出してもらいます。また、学期末に各自が一番関心を持ったレクチャーを一つ選び、それに関する論述テストを行います。(1)毎回提出する感想文、(2)学期末テスト、(3)出席を総合して成績評価が決まります。

テキスト名: 毎回、レクチャーの担当教員が準備したハンドアウトが配布され、その中で参考文献が紹介されます。

注意事項:  この講座は2回4単位まで受講できます。毎年共通のテーマが変わるので、各教員は同じレクチャーを繰り返すことはありません。すでに1回受講した人も今回のテーマに関心があれば、是非、受講して下さい。
 そして、この科目は、国際コミュニケーション学科の指定科目になっています。また「国際関係プログラム」、「国際ビジネスプログラム」、「国際協力プログラム」、「現代社会研究プログラム」を選択したいと考えている学生諸君ならびに、「アメリカ研究プログラム」をはじめ「ラテン・アメリカ」、「中国」、「韓国」、「スペイン」、「東南アジア」など各地域研究プログラムを選択しようと考えている学生諸君には、この講座を履修する勧めます。ここで学んだことは、将来、各プログラムに所属して自分の研究を進めてゆく際、必ず役立つものになるでしょう。