EU12カ国で共通通貨ユーロの紙幣やコインが流通し始めて(2002年1月1日)から3年以上の歳月が流れた。 マルク、フラン、ペセタなどEU加盟国の通貨はすでに姿を消してしまった。なぜ、なんのために、慣れ親しんだ国内通貨を捨ててまで共通通貨を採用するの必要があるのか?国ではないEUがなぜ、いかにして、ユーロという通貨を発行し、金融政策を司ることが可能なのか? 話す言葉や生活習慣が異なり、経済発展水準も異なる国々が一つの通貨で結ばれるという事実は何を意味するのだろうか? 税制や財政政策は各国が独自に管理している状態でも、共通通貨ユーロは安定しているが、今後も共通金融政策の適切な舵取りは可能なのだろうか?しかも、イギリスなどユーロ採用に消極的な国々が今後どうするかはまだ未知数である。 他方、肥大化したEUに市民の意思がより投影され、諸決定システムが機能不全を起こさないような仕組みを創るためにEUは「憲法」を発布しようとしている。国ではないEUが「憲法」を持とうとする意味はなんだろうか。2005年末にはフランスで多くの若者(移民2世、3世が多い)が暴動を引き起こした。一体、何が原因であろうか。 このような問いかけに答えるのが本講義の目的である。
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