コーディネーター:山下一夫・松井佳子
<まなぶ>という人間の営為は「生きる」ことと密接に結びついており、人間の一生とは<まなび>の連続ともいえよう。しかし<まなぶ>ということは一体どういうことなのであろうか。<まなぶ>ということは「わかるようになる」ことなのだろうか。「できるようになる」ということなのだろうか。結果として役に立たなければ、<まなんだこと>は無駄なのであろうか。本から<まなぶ>、メディアから<まなぶ>、人間関係から<まなぶ>、生活体験から<まなぶ>、といった多様な<まなび>のあり方に目を向けながら、<まなぶ>ということを多角的に重層的に考察してみることにしよう。
近年わたしたちを取り巻くインターネットなどの情報環境の変化により、知の獲得がいとも簡単に行われるようになってきている。しかしただ知識をどんどん入手することが果たして<まなぶ>ということなのであろうか。IT革命によって社会現象のヴァーチャル化が指摘される中で、生身の人間として「生きる力」を育む教育や生涯学習の重要性が指摘されている。また学問の細分化が進む一方で、分析知のみならず知の総合あるいは学際的なアプローチへの配慮や問題解決能力や創造的なヴィジョンの大切さも強調されるようになっている。ロゴス的知だけでなくパトス的知も射程に入れる必要があろう。
本講座では、<まなぶ>というテーマを取り上げ、学校における学習という狭義の<学び>にとどまらず、もっと広義に捉えた<まなび>も視野に入れながら、<まなぶ>ということの諸問題をさまざまな視点から考えてみたいと思う。
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