日本の古典芸能の中から、「雅楽」と「能楽(能)」を主に取り上げます。 扱う時代の範囲は、雅楽が平安時代の貴族に愛好される以前の時代からあった「東遊」などの「国風歌舞(くにぶりのうたまい)」から始め、室町期に世阿弥が大成した能が武家の教養として徳川幕府の式楽として採用される17世紀初頭までの約1000年間を半年で講義します。
雅楽も能も、当時の公家・武家の「支配階級」と密接に関わりながら発展した歴史的背景があり、日本の古典文学にも多くの曲や場面が登場します。歌詞を書きとめた物語や詩歌集も残っていますが、実際はどうだったのでしょうか。本講義では詞章や舞踊、音楽にとどまらず、日本の美術工芸として世界で高く評価されている美しい装束や面(おもて)などの「見た目」の視点を重視し、使われる役柄や、当時の服飾、社会情勢との関わりへと理解を深めてもらう講義になります。スライドやビデオ教材を多く用いるほか、時間外で国立劇場、能楽堂への観劇、観能を行う予定です。(希望者のみ、出席は自由です)
せっかく日本にいるのに日頃関わりの薄く、また何かと敷居が高く思われがちなジャンルですが、けしてそんなことはありません。これから世界に出てゆく皆さんに、また世界中から日本にみえる方々に、この講義が脈々と息づく日本の生きた美に触れる機会になればと思います。
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