後期(金・1)時間割表へ
    英文学研究II
  「理想の女」クレオパトラ
TAKAKUWA YOKO 
高桑 陽子
2単位 
2〜4 
後期 
41302600

シェイクスピアの『アントニーとクレオパトラ』は、エジプトの女王クレオパトラとローマの三執政官の一人であるアントニーとの有名なラブストーリーである。だがアントニーはクレオパトラを愛するあまり、しだいに「女性化」し、男としてのアイデンティティを崩壊させていく。「理想の女」クレオパトラは魅惑的であるとともに危険でもある。
アントニーとクレオパトラの関係は、男性/女性、ローマ/エジプト、西洋/東洋のような二項対立にもとづくヒエラルキーが幻想にすぎないことをさらけ出す。
一方、近代初期イングランドの舞台では少年が女役をつとめた。『アントニーとクレオパトラ』で「理想の女」クレオパトラを演じたのも、もちろん少年俳優である。
『アントニーとクレオパトラ』はジェンダーの問題を再考するうえで、きわめて興味深い劇である。『アントニーとクレオパトラ』においてクレオパトラがどのように表象されているかを分析して、女性の表象のイデオロギー性、ジェンダー・アイデンティティの問題について考える。あわせてロイヤル・シェイクスピア・カンパニー上演のビデオを鑑賞する。

評価方法: 平常点とレポートにより評価する。

テキスト名: William Shakespeare, ed. John Wilders, Antony and Cleopatra (the Arden Shakespeare), Thomas Nelson and Sons Ltd., 1997

授業計画――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1. イントロダクション
2. 女の国としてのエジプト: 欲望とジェンダー
3. エジプト対ローマ
4. クレオパトラの「無限の多様性」(1)
5. クレオパトラの「無限の多様性」(2)
6. 父権制社会ローマ
7. 「理想の妻」オクタヴィア
8. シーザーの怒りと不安
9. アントニーのアイデンティティの危機(1)
10. アントニーのアイデンティティの危機(2)
11. クレオパトラの少年俳優に対する言及のアイロニー
12. ジェンダー再考
13. まとめ