地域・国際研究講座は、毎回専門分野の異なる教員を講師に迎え、さまざまな角度から「共通のテーマ」について考えてゆくオムニバス形式の講座です。 講座のねらいは、多彩な知識を吸収することよりも、政治学、経済学、歴史学など社会科学領域の学問体系の方法論によって問題を読み解いてゆくことを通じて、学生諸君に社会科学の魅力に触れてもらうことにあります。 この講座は本学の専任教員を中心に毎回異なる教員が講師として登場しますから、学生諸君がそれぞれの教員の個性を知る良い機会です。また同時に、「地域・国際研究コースを履修したい」あるいは「どのコースを選択して良いか分からない」といった学生諸君(2年生以上の学生)、あるいは、今年度入学したばかりの学生諸君(現在1年生)は、自分が「将来どの研究プログラムを履修したらよいのか」を考えるきっかけになるはずです。 今年度の「地域国際研究講座」は「民主化と平和構築−私たちにできることは何か?」を共通テーマに取り上げます。冷戦終結後、第三世界を中心に地域紛争が多発していますが、紛争地域に平和を構築するため国際社会(国際機関、各国政府、NGOなど)は、多大な努力を行っています。冷戦終結後、なぜ地域紛争が激増したのか、その解決と永続的な平和の構築(peace-building)には、どのようなことが必要とされているのか?といった問題について考えて行きます。例えば、戦争終結後のイラクでは、一年半にわたり米英暫定政府による占領統治が続きましたが、昨年の6月にようやくイラク暫定政府が発足し、主権がイラク人の手に委譲されました。その後、今年1月末には選挙が実施され、イスラム教シーア派やスンニ派、クルド族との対立は依然として残ってはいるものの、かろうじて民主的政府の先駆けとなる政体が発足しました。今後のイラクに平和が訪れるかどうかは、テロリストとの戦いに加え、各宗教派閥、民族グループの代表が平等に政治に参加し、法の支配の下に民主的政府を作り上げることができるかどうかにかかっています。また、イラクでの紛争の再発防止と永続的な平和構築に向けて、国際社会がさまざまな側面で真剣に協力してゆくことが重要な課題となっています。日本も、自衛隊を送るだけでなく、日本にしかできない得意な分野で平和的な貢献をしてゆく必要があるのではないでしょうか? 今年の地域・国際研究講座では、こうした問題を私たちはどのように理解すべきなのか、その中で我々はどのような役割を果たしてゆくべきなのか、世界は我々にどのようなことを期待しているのか、といった問題についてイラクだけではなく世界各地に存在する地域紛争を取り上げながら、その民主的な解決方法と平和構築について各教員が解説し、問題提起を行います。そして、それをヒントに受講生の諸君が自分の頭で考え、自分なりの考えを持てるようになることを期待しています。 この講座の全体像(各回のテーマと担当教員)は最初の授業の際に紹介します。
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