現代国家論I
  21世紀の国家
AOYAMA HARUKI 
青山 治城
2単位 
1〜4年 
前期 
50403700

古代ギリシア以来、国家についてさまざまに論じられてきたことは事実であるが、現在の我々がイメージする「国家」と古代の国家とはかなり異なっている。現代の国家は、古代の「都市国家」でも中世的「帝国」でもなく、その歴史はそれほど長いものではない。ヨーロッパに源流を持つ「近代国家」は、主権と領土(国境)と国民からなる「主権国家」、「領域国家」、「国民国家」である。ところが、その近代国家は、今、EU統合に見られるように、その発祥の地において新たな展開を見せ始めている。
また、冷戦構造の終焉は、イデオロギーによる国家統合を危うくし、各地で「民族紛争」「宗教紛争」を引き起こしている。また、一極化したと言われる冷戦後の世界で支配力を強めたアメリカは、他の国を「悪の帝国」とか「悪の枢軸」などと呼んで非難し、武力攻撃さえ辞さない姿勢を見せている。果たして国家に「良い国家」と「悪い国家」があるのだろうか。そもそも、国家の正当性の根拠はどこにあるのだろうか。こうした問題を考えるために、本講では、できるだけ多くの生の現実に当たることで、「国家」をめぐるさまざまな現状を把握することに努めたい。

評価方法: 毎回講義の内容について小レポートを書いてもらう予定。これが一種の出席点となる。最後に、授業で触れた問題のいずれかに焦点を当てて、現代国家の問題についてのレポートを書いてもらう。

テキスト名: 青木一能他国家のゆくえ芦書房2001

  テキスト以外にも、毎回参考文献をあげるので、レポートのためにも早めに読んでいくこと。

注意事項: 欠席があまり多い場合には最後のレポートも受け取れない場合がある。授業計画は予定であり、順序、内容とも変更される可能性がある。

授業計画――――――――――――――――――――――――――――――
1.はじめに:
現代における国家の変容について考える。
2.近代国家:
ヨーロッパ的近代国家の理念を探る。
3.文明の衝突:
ハンチントン『文明の衝突』などを参考に、非ヨーロッパ世界の状況を考える。
4.グローバル化:
グローバル化の趨勢が「国家」に与える影響について考える。
5.地域統合:
各地で試みられている地域統合の動きについて考える。
6.地方分権:
ローカル・ガバナンスと呼ばれる地方自治、NGOの役割について考える。
7.安全保障とリスク管理:
国内問題、国際問題という区別におさまらない諸問題について考える。
8.情報化:
情報の共有化のさまざまな形について考える。
9.アメリカ:
一極化した世界における超大国アメリカ(帝国)について考える。
10.ヨーロッパ:
EU統合の表と裏について考える。
11.中国とアジア:
社会主義と市場経済、アジア型民主主義について考える。
12.アフリカ:
「架空国家」と呼ばれるアフリカの現状について考える。
13.まとめ:
ジェンダーの視点から現代国家の問題を考える。