1. | はじめに: 法や法学が一般に嫌われる理由はいろいろあるが、おそらく‘愛’を語る余地がないこともその一つかも知れない。実際、法が規定するのは「婚姻」ではあっても恋愛や「結婚」ではない。法の理念、精神は‘正義’だと言われる。正義と愛とは全く相反する価値なのだろうか。 |
2. | 犯罪と刑罰(1):テキスト第1章、1、2 日本人の多くが最初にイメージする法は、刑罰を課す「刑法」ではないか。その場合には、法は恐ろしいもの、近づきたくないものと感じられるであろう。だが、近代刑法の理論では、刑法は「犯罪者にとってのマグナ・カルタ」だとも言われる。刑法に規定のない行為はいかなる行為も罰せられないからである。そもそも「犯罪」とは何であり、「刑罰」とは何か。このことから考えていきたい。 |
3. | 犯罪と刑罰(2):テキスト第1章、3 近代刑法の大原則、「罪刑法定主義」について考える。刑法は「人を殺してはならない」とは命じていない。ただ単に「人を殺した者は、・・・の刑に処す」としているだけである。罪刑法定主義は、法と道徳の関係を考える上で重要な原則である。 |
4. | 犯罪と刑罰(3):テキスト第1章、4 ある行為が処罰対象となるためには、それが「犯罪」と認定されなければならない。「犯罪」が成立するための条件を考える。殺人罪を例にとれば、「人を殺す」とはどういうことだろうか。交通事故で多くの人が亡くなっている現状は、その数だけ「殺人」が行われていることになるのだろうか。精神障害者が無罪となるのはなぜか。 |
5. | 犯罪と刑罰(4):テキスト第2章 犯罪捜査から処罰に至る過程を考える。また、「陪審」制度や「死刑」制度の是非についても、参加者とともにディベートをしてみたい。 |
6. | 私事と自己決定: 国会や地方自治体の議員さんたちはほとんどがスーツを着ている。ジーンズで登庁して除名されたり問責された人もいる。こんなことは各自の「自由」ではないのだろうか。車に乗るのにシートベルトを締めないと処罰されるのは、どんな根拠に基づいているのだろうか。 |
7. | 不法行為法:テキスト第3章 民法上の責任が発生する原因の一つが「不法行為」である。現代社会は交通事故をはじめ、思わぬ事故で人を傷つけてしまう機会が増えるとともに、公害など大規模な被害となるとすべてを補償することが困難になる。そのため、各種の「保険」制度が用意され、また無過失でも賠償責任が課せられる場合がある。すると、「故意または過失によって他人の権利を侵害した者」に課される損害賠償義務という不法行為の原則が崩れることになる。こうした問題を踏まえて「不法行為」の現代的意義を考える。 |
8. | 契約法:テキスト第4章 民事責任のもう一つの柱が「契約不履行」に基づく損害賠償責任である。平たく言えば、約束違反に対する責任であるが、一体我々はなぜ約束を守らなければならないのだろうか。また、単なる「口約束」と書面をかわす正式な「契約」とはどのように違うのか。 |
9. | 家族法:テキスト第5章 民法の領域には、家族関係を規制する部分がある。婚姻条件などを定める親族法と相続に関する相続法である。この部分だけは、戦後大幅に改正されて、文字もひらがな書きに改められた。この改正の内容と意義を考える。昨今話題の「夫婦別姓」制度の問題も考えたい。 |
10. | 法の支配と法治主義:テキスト第6章、1、2 立法府たる国会は、どのように構成され、どのような権限を与えられているのだろうか。憲法と法律の関係を中心に考えていく。 |
11. | 基本的人権の尊重:テキスト第7章 犯罪者には「人権」はないのだろうか。民法上の様々な権利と憲法で保障される「人権」とはどのような関係にあるのだろうか。また、そもそも刑法や民法と憲法の関係はどうなっているのだろうか。憲法の人権保障の意義について考える。 |
12. | 違憲立法審査権:テキスト第6章、3 司法権の役割とは何か。近年話題になっている、司法改革、裁判への市民参加のありかたを考える。陪審制や参審制、ロー・スクール構想についても、その是非について考えたい。 |
13. | 法と国家:国際法について 法を作って執行する機関としては、まず「国家」が考えられよう。しかし、現在では「国家主権」を拘束する多くの条約が結ばれているし、地方自治がさらに進めば近代的な「国民国家」体制は、少なくとも変質せざるをえないであろう。テロや戦争に人々を巻き込む権限を国家は持っているのだろうか。こうした観点から人権と国家の関係を考える。 |