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研究演習-1 日英語比較表現論。英語の発想に基づく英語表現と、日本語の発想に基づく日本語表現の比較対照研究 |
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日英比較表現論がこのゼミのテーマである。 外国語に熟達するには、母語との比較を避けて通ることはできない。 たとえば日本語と英語の間には、単語や文法の違いのほかに、表現方法の違いがある。表現の違いには単語や文法も関係するけれども、それ以前に発想の仕方や、物の見方や捉え方が日英では異なるから、同じことを言おうと思っても表現が違ってしまう。その結果、日本人は望みもしないのに、ぎこちない英語表現を使ってしまう。日本語と英語との間のどのあたりに問題点が潜んでいるのであろうか?わたしたちは日常の英語習得の過程でうすうす気づいていることがあるが、このゼミではそれをより明確な形で捉えて、今後のコミュニケーション活動に役立てることにしよう。 ここに具体例を一つあげる。 「それしか知らない。」という日本語を自然な英語で言うと、“That's all I know.”だそうだ。これは “I don't know anything but that.” “I don't know anything else.” “I know nothing else.” などという表現よりも自然だそうだ。ところで、この四つの英文を比べてみると、あとの三つは日本語と同じ否定表現だが、英文は逆に肯定表現になっている。日本語が否定文なのに、英文は肯定文になっているのはなぜだろうか? 日本語も英語も底層的意味は同じだが、日本語で「それを知らない。」と言えば「それ」しか言及されないが、「それしか知らない。」と言えば「しか」が加わるので「それ以外のもの」が言及されるようになる。英語と同じことを言っているのだけれども、日本語表現では「それ」と「それ以外のもの」の両方に言及がある。 英語の方は、thatのみが表現されているだけである。それ以外のものは言及されていない。まことにストレートで単刀直入な表現である。 同じことを表現しても日本語と英語とでは随分と表現が食い違うことがあるものだ。英語らしい英語を使うには、こういう問題を克服していく必要があるだろう。なぜなら我々はつい母語の感覚で英語を使ってしまうからだ。 この演習ゼミでは、日英語の間には一体どれくらいこのような発想と表現のずれがあるのかを探っていきたい。最初は発想と表現のずれの具体例を広範囲に集めよう。そして、その次にそれを根本から支配している原理を探求しよう。原理が明らかになれば、あとは応用問題だ。頭と経験がわれわれの言葉の技を磨いてくれるだろう。 |
評価方法: | ゼミにおける意見の発表が活発か、すぐれた洞察力があるか、ユニークな観察をするか、研究熱心か、など、授業参加時の積極性を評価する。あとの半分は前期と後期の最終授業日までに提出するゼミレポートの内容と形式によって評価する。欠席の多い学生には高い評価を与えない。 |
テキスト名: |
国広哲弥編『日英語比較講座 第4巻 発想と表現(ISBN 4-469-14144-5)』大修館書店、1982年 |
授業時に参考書目一覧表を配布する |
注意事項: | レポートを書くのが苦手な学生がいるが、どんなにつたなくても、とにかく書いてみよう。書けばそれが土台になって次の段階に進めるのだ。大切なことは何かの問題に気がつくことで、それを探求してみることは宝捜しのようで面白いものだ。 |
授業計画―――――――――――――――――――――――――――――― |
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