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    レトリカル・コミュニケーション論
  
MOROOKA JUNYA 
師岡 淳也
2単位 
1〜4年 
前期 
55000200

本科目は、レトリック(広義での「説得コミュニケーション行為」)の入門コースである。レトリックは、しばしば「政治家による詭弁」として軽視されたり、「文学者による詩的表現」といった「特殊なコミュニケーション行為」として理解されがちである。本コースでは、レトリックを、単なる「政治的策略、文学的営み」としてではなく、広く「社会的行為」として捉えることにしたい。
我々は社会生活を送る上で、説得行為としてのレトリックを避けることはできない。友達と話す、仕事(アルバイト)をする、本を読む、テレビを見る--このような社会的行為を通して、我々は日常的に様々な「説得メッセージ」に触れる(例えば、「政治キャンペーン」、「企業広告」、「ニュース報道」そして「映画やテレビドラマにおける特定の世界観、人物像、生活様式の肯定」)。「政治に対する興味」や「文学的素養」の有無にかかわらず、我々はレトリック無しに社会生活を営むことはできないのである。
説得行為としてのレトリックは、我々の物の見方、考え方、行動に多大な影響を与える。例えば、中絶を「胎児の殺害行為」として捉えるか、「女性の権利」として捉えるかによって、中絶という行為に対する見方は大きく変わってくる。レトリックの使用は、中絶のような極めて「政治的・宗教的な問題」に限定されない。「大学を卒業して<社会人>になる」、「家庭をもって、男ははじめて<一人前>である」、「結婚して子供を産むことが<女の幸せ>」「英語をマスターすることが<国際人>の条件」「自衛隊の海外派遣は<普通の国>としての日本の<国際的責務>」「<不良外国人>が凶悪犯罪の温床となっている」。このような「レトリック」を、誰もが一度は耳にしたことがあるだろう。上記の例が示すように、レトリックは、様々な次元で我々の思考・行動様式に影響を与える説得行為なのである。
「友達に用事を頼む」、「バイトの面接で自分をアピールする」といった対人間コミュニケーションも、もちろん説得行為ではあるが、本講座では、「公的な場面」における「社会行為」としてのレトリックに焦点を置くことにしたい。 
本コースでは、古代ギリシャ・ローマ時代に発展した古典レトリック理論、ケネス・バークに代表される現代レトリック理論の双方に依拠しながら、具体的な社会問題をレトリックの観点から考察していく。具体的なテーマとして、現時点では「外国人労働者問題のレトリック」、「AIDS/HIVのレトリック」、「国際化のレトリック」、「愛国心のレトリック」などを予定している。同時に、現代社会におけるレトリック行為を考察する上で切り離すことのできないマス・メディア(特に、メディア産業)の役割についても、若干ながら考察することにしたい。
それ以外の、細かい授業予定、課題、評価方法、教材に関しては、未定である。

評価方法: 未定ではあるが、「テスト」や「出席」だけでなく、レポートやクラス発表など、学生の「積極的な貢献」も加味して成績評価をしていきたい。

テキスト名: テキスト・参考文献ともに現時点では未定。