後期(金・4)時間割表へ
    日本倫理思想史A
  芭蕉の文学と思想
UOZUMI TAKASHI 
魚住 孝至
2単位 
1〜4年 
後期 
50300401

芭蕉は、俳諧の道を三十年以上にわたって歩む中で、座興で滑稽さをねらった俳諧から、人生の真実を歌う「誠の俳諧」へと深めていった。後半生は、芭蕉庵に移り、幾度も旅をして、弟子を各地に作った。句ばかりでなく、多くの俳文、紀行文を書き、またその俳論は弟子たちによって伝えられている。「不易流行」、「松のことは松に習へ」、「高く悟りて俗へ帰れ」などに、芭蕉の文学の本質、思想が端的に表われているが、その根底には、大きな自然・生命への帰入がある。その生涯を辿りながら、芭蕉がいかにして独自の思想を拓いていったのか見るとともに、芭蕉を通して、日常の只中に美を見出す日本人の美意識を考えてみたい。

評価方法: 講義後の感想、中間の小レポート、期末試験

テキスト名: 潁原・尾形訳注新訂 おくのほそ道角川文庫

  参考文献は講義の最初に紹介する

授業計画――――――――――――――――――――――――――――――
1.はじめに、日本文化史上における芭蕉
2.I. 蕉風の確立まで
1. 生涯を貫く「この一筋」
3.2. 職業的俳諧師からの転換―近世的享楽文化からの隠棲
4.3. 芭蕉庵の生活―不易の文学の希求(西行と漂泊の詩人たち)
5.4. 蕉風の確立―『野ざらし紀行』―芭蕉にとっての旅と紀行文
6.5. 俳諧連歌―『冬の日』 連衆と宗匠としての芭蕉
7.II.芭蕉の作品と思想の展開
1. 「おくのほそ道」の旅と「不易流行」
8.2. 風雅の伝統―西行・宗祇・雪舟・利休
9.3. 思想の背景にある『荘子』と禅
10.4. 『おくのほそ道』の執筆
11.5. 「軽み」―日常の美の発見
12.6. 最晩年の俳論と芭蕉の終焉
13.おわりに、芭蕉の日本文化史上の位置づけ