後期(木・4)時間割表へ
    ラテンアメリカ研究入門
  日本とラテンアメリカの関係
YAGINUMA KOICHIRO 
柳沼 孝一郎
2単位 
2〜4年 
後期 
43401400

日本とラテンアメリカ諸国の関係は、第二次世界大戦をはさんで戦前と戦後に二分されるが、戦前期においては、メキシコ、ペルー、アルゼンチン、ブラジルへの日本人の「中南米移住」の歴史であった。戦後期においては、ボリビア、パラグアイ、アルゼンチン、ブラジルとの政府間で締結された「移住協定」による日本人の集団移住によって両国の関係が再開されたが、60年代の経済高度成長にともない、工業技術移住者および日本企業の中南米進出に取って替わり、経済・技術協力による技術の送出に代表されるように移住形態が多様化した。後期は、ザビエルの日本渡来に始まる、すなわち大航海時代における日本とスペイン、その植民地メキシコ、ポルトガルとの交渉関係、明治時代から戦後における日本とラテンアメリカ諸国との移住関係、経済・貿易関係、経済・技術援助(ODA)関係、文化交流関係など総合的な関係について、以下の内容に沿ってビデオを鑑賞し解説を加えながら授業を進める。

評価方法: 課題提出(60%、課題については最終授業時に発表する。参考図書文献一覧も配布する)、ビデオ鑑賞についてのミニレポート(30%)、出席など平常点(10%)を総合して評価する。

テキスト名: 以下をテキストとしてプリント配布する。
柳沼孝一郎「大航海時代と日本〜スペイン語圏と日本〜」
柳沼孝一郎「近代日本の海外移民政策と中南米移住」
柳沼孝一郎「戦後期日本の海外移住政策とラテンアメリカ」

注意事項: ラテンアメリカ地域研究に関心のある学生諸君、とりわけ「日墨政府交換留学生」受験を希望する学生諸君、また「日本語教員養成プログラム」受講生のなかで中南米において日本語教員として国際協力に従事したいと希望する学生諸君の積極的な参加を期待したい。

授業計画――――――――――――――――――――――――――――――
1.総論
1)16・17世紀の日本・メキシコ・スペイン関係史
大航海時代と日本:スペイン帝国の太平洋覇権確立と東アジア進出、南蛮時代
2.日本とスペイン、ヌエバ・エスパーニャ(メキシコ)、ポルトガルとの交渉関係:
織田信長・豊臣秀吉・徳川家康とスペインおよびポルトガルの関係、ザビエルの日本渡来、ルイス・フロイスの「日本語文法書」「葡日・日葡辞典」「日本史」「日欧文化比較論」、アレッシャンドロ・ヴァリニャーノ日本巡察師、天正遣欧少年使節団、南蛮人(バテレン)の日本観
3.日本とスペイン:
スペインの太平洋ガレオン船貿易、布教と貿易(キリスト教と南蛮貿易)、キリシタン追放令、サン・フェリペ号事件、長崎26聖人殉教事件、ビベロの対家康「協定案」、幕府とソテロの「平和協定条項」、支倉常長遣欧使節−鎖国への序章
4.2)近代日本とラテンアメリカ
近代日本とメキシコ:
メキシコ金星観測隊の日本滞在、「日墨修好通商航海条約」の締結過程と史的意義(「条約改正」)
5.榎本武揚メキシコ殖民の構想と実践:
「日墨協働会社」の理念と実践、日系社会と日本語教育、まぼろしの「西和辞典」
6.戦前期の日本とラテンアメリカ:
近代日本の「海外移民政策」、中南米移住の軌跡、ブラジル移住の進展
★日本政府のいかなる海外移民政策のもとに、さらにラテンアメリカ諸国のいかなる経済産業開発振興政策のもとに「日本人の中南米移住」が実施されたのか。
★ラテンアメリカ諸国の社会経済発展に日本人移住者がどのように関わり、どのようにして日系社会が形成されたのかについて、日系人社会の形成過程をさぐる。
7.3)戦後期における日本とラテンアメリカ:
日本の戦後復興と中南米移住の再開:
日本政府の海外移住振興政策と中南米移住
8.「移住協定」の締結と社会経済的背景:
吉田茂首相の「移住借款」と中南米移住振興政策、移住協定の締結(日本ボリビア移住協定・1956年、日本パラグアイ移住協定・1959年、日本ブラジル移植民協定・1960年、日本アルゼンチン移住協定・1961年)
9.中南米への技術移転:
メキシコ、ブラジル市場への技術移転
10.日系社会の形成と文化交流:
中南米の日系社会(事例:メキシコ、キューバ、ペルー、アルゼンチン、ボリビアの「オキナワ村」、パラグアイの「イグアス移住地」、ブラジル・サンパウロ)、日本語学校と日本語教育
11.4)21世紀の日本とラテンアメリカ:パートナーシップの構築にむけて
グローバル化と日系企業の中南米進出
12.日本の対ラテンアメリカ経済技術協力(ODA)
13.日本とラテンアメリカ諸国の文化交流
14.日本とラテンアメリカ〜パートナーシップの構築にむけて
15.総括
課題提出について発表