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    スペイン語翻訳法
  
HONDA SEIJI 
本田 誠二
2単位 
2〜4年 
前期 
43200100

今年度より2年次より開講となるこの授業は、さまざまな分野のスペイン語文献をいかに実用的にして日本語に訳していくべきかを、理論と実践の両面から探っていくことを目的としている。そのための手段として、あるテクストをどのように訳してあるかを例示し、訳文のもつ問題点を指摘して、よりふさわしい訳文を見出すように努める。対象テクストは古典文学の『ドン・キホーテ』をはじめとする文学作品(詩、散文、小説、演劇)、および評論、エッセー、新聞、雑誌等のジャーナリズムである。担当者の専門性との関わりから、当面、商業・経済・工業・ハイテク関連のテクストは扱わない。日本文学がどのように翻訳されているかも検討する。

評価方法: レポートおよび出席点による。

テキスト名: Octavio Paz, Traduccion : literatura y literaridad, Tusquets, 1990

参考文献: 別宮貞徳翻訳と批評講談社学術文庫

  テキストは授業開始時にコピーで配布する。翻訳について書かれた本は多くあるので、最初の授業時に主要な参考文献を紹介する。また今まで読んだ翻訳で気に入ったものがあれば、それを題材として具体的に翻訳について考えることができるので、前もってそうした翻訳を探しておくことが望ましい。

注意事項: この授業は翻訳の理論面を重視するので、与えられたテクストの予習が必要となる。

授業計画――――――――――――――――――――――――――――――
1.翻訳とはなにか。翻訳によって何を得、何を失うのかといった翻訳にまつわる本質的議論をオクタビオ・パスの詩論を通じて考察する。
2.翻訳文化と日本語 日本は翻訳大国といわれるが、その根拠と日本文化との関連はなにか。はたして文化は翻訳されうるであろうか。
3.翻訳は世界でどのように捉えられているか。ヨーロッパ連合(EU)ではその地域的拡大によってますます構成国同士のコミュニケーションがとりにくくなっている。国家間のコミュニケーションの問題を翻訳を通して考える。
4.翻訳のもつ問題点 誤訳がもたらすさまざまな問題点を考察する。なぜ誤訳が生まれるのか、また誤訳と直訳、その他訳文のレトリック的側面を考察する。
5.『ドン・キホーテ』の翻訳史 明治以来、セルバンテスの名著の翻訳は長い歴史をもっている。最近岩波書店から上梓された牛島訳を中心にすえて、翻訳史をたどっていく。
6.日本語とスペイン語の文章の構造 日本語に訳すことがいかに困難な営みなのか、その難しさを改めて認識することが必要である。
7.日本語から外国語への翻訳 問題をスペイン語に限定すると、ごくわずかな著名作品をのぞいてほとんど未開拓な分野である。今後の可能性をさぐる。
8.日本語の難しさ その日本語をいかに磨いていくか。翻訳が当該外国語の文法的理解と日本語による表現力によって規定されるとすると、最も基本的な日本語をどのように磨いていくかが課題となる。
9.翻訳を通して日本を知る 日本の古典は古語の難しさによって外国語と同じか、それ以上に現代の日本人にとって近づきにくくなっている。たとえば源氏物語を英語で読むことにより、より客観的な理解を得られるかもしれない。翻訳が固有の文化の理解にどのように役立っているかを考える。
10.日本文化と翻訳語 翻訳語が日本語および日本社会にどのような影響を与えてきたか、その歴史と今後の展望を考える。