後期(木・1)時間割表へ
    憲法B
  国家と憲法
AOYAMA HARUKI 
青山 治城
2単位 
1〜4年 
後期 
30003002

憲法という「法律」は他の法令と少し違ったところがある。一言でいえば、憲法が立法者を決め、それの作る法律に正統性を与えるものだからである。つまり、何が正統な「立法権者」であるかを決めているのが憲法なのである。もちろん、拘束力をもった判決を下す権限をだれがもつのかを決めているのも憲法である。法的に言えば、そうした諸権限の総体、連鎖が「国家」なのであり、憲法は国家を構成するものなのである。しかし、国家あってこその憲法であり、国家が憲法を作るのだという議論も根強く残っている。日本国憲法に即しながら、憲法と国家の関係を考える。権力分立の原理とはどういうものか、日本国憲法においてはどのように実現されているか、この点を中心に見ていく。
現在の憲法は、占領下アメリカの指導によって作られた経緯から「日本国」にはふさわしくないという議論もある。その中には、「憲法」自体不要ではないかという「廃憲論」もある。こうした点を考えても、現憲法の基本理念である「立憲主義」「法の支配」の意義を十分に理解されるように配慮したい。

評価方法: 基本的には期末の筆記試験による。中間に小テストを行う予定。

テキスト名: 初宿正典他いちばんやさしい憲法入門有斐閣1996

参考文献: 鶴見俊輔他英文対訳 日本国憲法を読む柏書房1993

  参考文献を用意すれば憲法の条文は見られるが、他の法令を参照する場合もあるので、小型六法を用意すること。

注意事項: 授業計画は、順序、内容とも予定であり、変更される場合がある。

授業計画――――――――――――――――――――――――――――――
1.はじめに:
ビデオ(「憲法から考える21世紀の日本」)を見ながら、日本という「国家」について考える。女性天皇の問題や国際貢献のあり方など、憲法と国家の関係が今揺れ動きつつある。そうした点についての理解を目指す。
2.憲法とは何か:
Constitutionと Constitutional Lawないし Fundamental Lawの意義と違いを考える。
3.最高法規としての憲法:
日本国憲法第10章の意義を考える。
4.大日本帝国憲法と日本国憲法:
ビデオ(「憲法はまだか」第1部)を見ながら、戦前の日本の国家体制を考える。
5.日本国憲法制定の法理:
ポツダム宣言受諾に始まる日本の戦後において、一種の革命が起こったと見る見方から占領下における改正は無効であるとの議論まで、「新しい憲法」の制定についてのさまざまな見方を考える。
6.象徴天皇制と国民主権:テキスト15
日本国憲法制定過程ならびに成立直後に起こった「国体論争」と「主権論争」について考える。天皇制と国民主権原理の関係が問題となる。
7.平和主義:
ビデオ(「憲法はまだか」第2部)を見ながら、憲法第9条と自衛隊および日米安保条約について考える。
8.政府の9条解釈:テキスト14
日本国政府の9条解釈は、自衛権否認論から最近の集団的自衛権容認論まで、大きな変遷をたどってきた。その過程をふりかえる。同時に、国家の自衛権とは一体何か、自衛戦争と侵略戦争とはどう違うのか、を考える。
9.権力分立制度:
フランス人権宣言は、人権尊重の原理とともに権力の分立を「近代憲法」であるための基本的条件としている。その趣旨を考える。
10.国会:テキスト17, 18
日本国憲法41条を中心に「立法」権と「国会」の役割について考える。
11.内閣:テキスト19
日本国憲法には「行政権は内閣に属する」とあるが、内閣や行政とは何であり、地方行政とはどのような関係にあるのか(あるべきか)を考える。
12.地方自治と国民代表:テキスト18, 20
現在、中央政府と地方自治体との関係が問題になっているが、地方自治の本旨とは何か、「国民代表」の概念から考える。
13.憲法改正:テキスト21
日本国憲法は、特にその第9条に関して、条文と現実の乖離が激しくなっている。こうした事態を「憲法の変遷」というが、もはや、そうした捉え方の限界を超えている。憲法改正の意味について考える。