日本語と英語の様々な言語現象を、記述的一般化および、言語理論による説明と関わる形で考察・分析する。日本語と英語の表層的な違いに終始するのではなく、「言語」一般の体系の観点から日本語・英語の現象を観察し、それにより、教育文法や記述文法では得られなかった一般化や説明に至る道筋を示す。この講義を通して、各々の学生は自分の研究トピックを絞り込むと同時に理論との関連を意識して発展させることができるようになることを目指して欲しい。 テキストとしては、近年出版された研究社出版からの『日英語比較選書』シリーズの中から、統語構造に関連するもの、概念意味と文表現に関するもの、語用と発話行為に関するもの、を候補として考えている。それらで扱っているトピックを概観して上で、学生の興味に応じて、どの程度深く考察するかを決める。 本講義では、テキスト同様、英語での現象の観察と一般化をもとに、日本語での現象を考察するという方向で、さまざまな言語現象とそれらにまつわる疑問点を考察する。学生には、ここで扱う現象や説明を理解し、それらと関わる現象を自らの研究トピックとして発展することができるようになってくれることを望む。提示される現象の説明が必ずしも「正しい」わけではないが、その説明に至る道筋を理解することは、どのような研究であれ、自らの研究を先行研究との関わりにおいて位置づける作業(それは、アカデミックコミュニティの一員である研究者としては最低限必要な作業である)には不可欠なものである。先行研究のfairな理解があってはじめて、自らの研究の位置付けが可能になる。その意味でも、宿題として課すトピック毎の「なぜ」の問には必ず答え、そうした研究作業の基本をマスターしてもらいたい。(余談だが、修士論文や修士研究報告が書けない、まとまらない場合の大きな原因は、この作業ができないことに因るのである。)
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