英日対照言語学(統語) 
HASEGAWA NOBUKO
長谷川 信子 
4単位 
  
後期 

日本語と英語の様々な言語現象を、記述的一般化および、言語理論による説明と関わる形で考察・分析する。日本語と英語の表層的な違いに終始するのではなく、「言語」一般の体系の観点から日本語・英語の現象を観察し、それにより、教育文法や記述文法では得られなかった一般化や説明に至る道筋を示す。この講義を通して、各々の学生は自分の研究トピックを絞り込むと同時に理論との関連を意識して発展させることができるようになることを目指して欲しい。
テキストとしては、近年出版された研究社出版からの『日英語比較選書』シリーズの中から、統語構造に関連するもの、概念意味と文表現に関するもの、語用と発話行為に関するもの、を候補として考えている。それらで扱っているトピックを概観して上で、学生の興味に応じて、どの程度深く考察するかを決める。
本講義では、テキスト同様、英語での現象の観察と一般化をもとに、日本語での現象を考察するという方向で、さまざまな言語現象とそれらにまつわる疑問点を考察する。学生には、ここで扱う現象や説明を理解し、それらと関わる現象を自らの研究トピックとして発展することができるようになってくれることを望む。提示される現象の説明が必ずしも「正しい」わけではないが、その説明に至る道筋を理解することは、どのような研究であれ、自らの研究を先行研究との関わりにおいて位置づける作業(それは、アカデミックコミュニティの一員である研究者としては最低限必要な作業である)には不可欠なものである。先行研究のfairな理解があってはじめて、自らの研究の位置付けが可能になる。その意味でも、宿題として課すトピック毎の「なぜ」の問には必ず答え、そうした研究作業の基本をマスターしてもらいたい。(余談だが、修士論文や修士研究報告が書けない、まとまらない場合の大きな原因は、この作業ができないことに因るのである。)  

評価方法: ・基本的には講義を中心に、2週間(4コマ)程度で一つのトピックをカバーする。
・各トピックについて、テキストと講義の理解と関わる宿題を課す。それらには、単に答えるだけでなく、自らが作例、発掘した他の例文や、それと関連あると思われる現象、提示された分析への問題点など論考を深め、広げることが望ましい。場合によっては、その宿題に関し発表してもらう。
・講義後半(11月半ば過ぎ以降)では、講義と平行して、各自の研究トピックについて発表する。
・評価は、宿題、発表、扱った現象と関わりのあるトピックを各自選んで考察を深めた期末レポート、クラス討議への参加、を総合的に考察する。

テキスト名: 竹沢幸一・John Whitman『格と語順と統語構造』(日英語比較選書9)研究社出版、1998年
田中茂範・松本曜『空間と移動の表現』(日英語比較選書6)研究社出版、1997年
赤塚紀子・坪本篤朗『モダリティと発話行為』(日英語比較選書3)研究社出版、1998年

授業計画――――――――――――――――――――――――――――――
1.(第1週〜第4週)日英語の文構造(格、語順、主語)
2.(第5週〜第8週)前置詞と空間名刺、移動動詞
3.(第9週〜第12週)文の意味と文脈