社会思想史II 
AOYAMA HARUKI
青山 治城 
2単位 
1〜4年 
後期 
現代における愛の思想

愛は社会の構成原理たりうるか。ヨーロッパの近代社会思想は、「個人」の権利や利益を中心にすえて、それができるだけ多く実現する社会を理想として掲げてきた。そうした個人主義的思想に対して、根本的批判を提起しているのが、近年の「共同体主義」であり、フェミニストたちである。あるいは、そもそも「社会」とはそうした「個人」としての人間からなるのではないのではないかという根本的疑問を提起する社会学理論もある。
本講義では、前期でのいわば「愛の概念史」を踏まえて、新しい、非個人主義的な社会思想を取り上げたい。近代のある哲学者は、結婚を「男女の間における生殖器の相互利用契約」と定義していた。まさにこれこそ、個人主義的、啓蒙主義的近代社会思想の典型であるが、多くの人はグロテスクに感じるのではないか。だが、同時に個人の意志を無視して愛が強制されたり押しつけられたりするのもまたいかがわしい。
近代的社会思想の主流を占めるリベラリズムの伝統に対するいくつかの批判的論点を、「愛」の観点から捉えなおしてみたい。  

評価方法: 出席および、数回の小レポートと最終レポートによる総合評価。

テキスト名: 愛を主題にした社会思想史の本はあまりないが、「社会思想史」と題されたものはたくさんある。そうしたものも参考にしてもらいたい。本講義のテキストは、その都度配布する予定。

注意事項: 各回の授業計画はあくまで予定であり、変更される場合もある。 

授業計画――――――――――――――――――――――――――――――
1.はじめに:
 愛の諸相
2.カント
 合理主義、啓蒙主義
3.ヘーゲル
 愛と理性
4.マルキ・ド・サド
 悪徳の栄え
5.ウェーバー
 合理主義と神秘主義
6.フロイト
 性欲の発達と文化
7.フーコー
 性の考古学
8.サンデル
 位置ある自我(自我の社会的構築論)
9.テーラー
 自己の起源、共同体主義
10.マッキンタイヤー
 美徳なき時代における共生の原理
11.ルーマン
 情念としての愛
12.バイタイユ
 性愛と家族制度
13.ヌスバウム
 愛国主義とコスモポリタニズム
14.まとめ
「自由・平等」に代わる「友愛」主義の精神