ヨーロッパ政治経済論II 
TOKADO KAZUEI
戸門 一衛 
2単位 
1〜4年 
後期 
共通通貨ユーロの誕生にはどんな意味があるか?

2002年1月1日からEU12カ国で共通通貨ユーロの紙幣やコインが流通し始めた。それから2ヶ月もしないうちに、マルク、フラン、リラ、ギルダー、ペセタ、エスクードといった加盟国の通貨は姿を消した。
なぜ、なんのために、慣れ親しんだ国内通貨を捨ててまで共通通貨を採用するの必要があるのか?国ではないEUがなぜ、いかにして、ユーロという通貨を発行し、金融政策を司っているのか?
話す言葉や生活習慣が異なり、経済発展水準も異なる国々が一つの通貨で結ばれるということは何を意味するのだろうか? 税制や財政政策は各国が独自に管理している状態で、共通通貨の安定と金融政策の適切な舵取りは可能なのだろうか?
このような問いかけに答えるのが本講義の目的である。最終的に、そもそも我々にとって「通貨」とは一体どんな意味を持っているのかという根源的な問題について熟考することができれば、望外の喜びである。  

評価方法: 出席点 約25点、自由課題レポート 約15点、論述試験 約60点の計100点で評価する。

参考文献: 田中素香『ユーロ』岩波新書、2002年
田中・長部・久保・岩田『現代ヨーロッパ経済』有斐閣、2001年
岩井克人『資本主義を語る』講談社、1994年
特定の教科書は使用しない。ハンドアウト・レジュメを配布する。適宜、有益な参考文献を紹介する。

注意事項: 「ヨーロッパ政治経済論 」を履修済みであることが望ましい。国際2学科の学生にも受講を勧める。3年次から戸門のゼミ(「地域・国際研究演習」=「研究演習」)を履修し、いずれは卒論を執筆したいと希望する学生は2年次(時間割上不可能な場合は3年次)に、この講義を履修することが望ましい。 

授業計画――――――――――――――――――――――――――――――
1.EMU(経済通貨統合)とは何か?
2.国際通貨体制の変化(ブレトンウッズ体制の動揺)
3.「トンネルの中の『スネーク(へび)』」から「スネーク」へ
4.EMS(欧州通貨制度)と「通貨の嵐」
5.EMU(経済通貨同盟)のシナリオ:マーストリヒト条約
6.「収斂条件(convergence criteria)と「安定・成長協定(Stability and Growth Pact)」
7.共通通貨のメリットとデメリット
8.「Optimum Monetary(Currency)Area最適通貨圏」の検証
9.European Central Bank(欧州中央銀行)システム
10.ユーロ未採用国の対応(イギリス、スウェーデン、デンマーク)
11.EU経済と主要国の政治経済動向
12.EUの対外通商関係
13.EUと日本:欧州型社会経済システムの意味