日本倫理思想史IIC 
KUBOTA KOMEI
窪田 高明 
2単位 
1〜4年 
後期 
恋愛の倫理思想史

恋愛は一見すると個人的な問題のように思える。しかし、社会が存続していくためには、その成員である人間が再生産される必要がある。ということは、再生産の前提となる恋愛をいかに可能にするかが大きな問題である。恋愛はこの意味では、きわめて社会的な問題なのである。
個人的であると同時に社会的な問題である恋愛をどう考えるかは、すべての社会の特質に深く関わる問題であった。
この授業では、日本人が恋愛をどう考え、どう実現してきたかを学び、恋愛の多様性に目を向ける。
ただし、この授業を受けても、現実の恋愛に強くなることはない。
授業に関する情報が、次のホームページで提供されることがあるので、時々参照しておくこと。<http://www.kuis.ac.jp/~kubota/
(以下の授業計画の実施回ごとの内容は、かならずしも各回ごとの内容というよりは、授業の展開の予定を示したものである。  

評価方法: 学期末に試験を行なう。一部、学期中のミニテストを加算する。(ただし、履修者数によってはレポートにする場合もある。)

テキスト名: 佐藤正英『日本倫理思想史入門』東京大学出版、2003年

授業計画――――――――――――――――――――――――――――――
1.恋愛と社会
  個人的な問題としての恋愛
  社会的な問題としての恋愛
  恋愛の歴史性
予習事項:万葉集
2.古代の恋愛
  万葉集における恋愛
  民衆の恋愛の原型
  恋愛と名前
予習事項:古今集
3.貴族の恋愛
  恋愛の力、和歌
  古今集の恋愛
  伊勢物語
予習事項:源氏物語
4.源氏物語の恋愛
  平安朝女流文学の恋愛
  源氏物語
  更級日記
  表現と現実
予習事項:仏教、煩悩
5.恋愛と仏教
  仏教の基本的な発想
  煩悩としての恋愛
  仏教と恋愛
予習事項:お伽草紙
6.中世の物語における恋愛
  恋愛の力――小栗判官の物語
  神と恋愛
  恋愛と権力
予習事項:儒学
7.江戸時代の道徳主義
  恋愛の禁止
  武士という存在
  本音と建て前、日本における恋愛の重要性
予習事項:井原西鶴
8.心中という恋愛
  町民における恋愛
  西鶴の好色物
  好色一代男
  好色五人女
予習事項:伊藤仁斎
9.儒学と恋愛の両立
  伊藤仁斎の日本的な儒学
  愛の倫理としての儒学
  仁斎の限界
予習事項:本居宣長、国学
10.恋愛の復権――本居宣長の思想
  江戸時代における源氏物語
「もののあはれ」という概念
  道徳と恋愛の逆転
  日本と中国
予習事項:北村透谷
11.近代的な恋愛の発生
  近代的な恋愛の輸入
  北村透谷の思想
「厭世詩家と女性」
12.近代的な恋愛の行方
透谷の思想のほころび
近代的な恋愛観の崩壊