日本倫理思想史IIB 
UOZUMI TAKASHI
魚住 孝至 
2単位 
1〜4年 
後期 
芭蕉における詩と実存

十五世紀末から盛んになった俳諧を、言葉遊びの芸から人生の機微を詠う詩に高めたのは松尾芭蕉であった。中世の隠者の伝統を受け継ぎながら、芭蕉は庵での生活と旅を繰り返し、連衆と交流する中で「誠の俳諧」を成立させていったが、そこに至るまでの過程と「不易流行」、「造化にしたがひ造化にかえれ」、「高く悟りて俗に帰れ」などと説いた思想を問題としたい。  

評価方法: 講義後の感想、中間の小レポート、期末試験による。

テキスト名: 中村訳注『芭蕉紀行文集』岩波文庫
尾形他訳注『新訂おくのほそ道』角川文庫
服部土芳『三冊子』(抄)(コピー版)

授業計画――――――――――――――――――――――――――――――
1.はじめに 今期の問題意識−芭蕉の思想的位置
2.芭蕉出現以前の俳諧―同時代の俳人
3.芭蕉の生涯の概観―根底にあるもの
4.深川への隠棲―荘子の思想・西行への思い
5.「野ざらし紀行」の旅―新たな俳諧への道
6.『冬の日』の達成―蕉風連句の世界
7.「笈の小文」の旅
8.「更科紀行」の旅から「おくのほそ道」へ
9.「おくのほそ道」の旅と作品
10.「おくのほそ道」の作品と思想(上)「時」と「旅」と人生
11.「おくのほそ道」の作品と思想(下)「不易流行」
12.『猿蓑』の歌仙―蕉風連句の達成
13.芭蕉の俳論―『去来抄』と『三冊子』−「松のことは松にならへ」
14.「軽み」への展開―「高く悟りて俗にかへれ」
15.まとめ 芭蕉の達成とその影響