英文学講義B 
TAKAKUWA YOKO
高桑 陽子 
4単位 
1〜4年 
後期 
『ハムレット』を読む

聖書のカインとアベルのように、兄弟同士のライヴァル意識は時に殺人をも引き起こす。クローディアスは兄であるデンマーク王をうらやんで暗殺し、王位と王妃を簒奪する。兄弟殺しで幕を開ける『ハムレット』は、家族の悲劇でもある。
ハムレットの父の亡霊は、叔父を殺して復讐するよう息子に命ずる。だがクローディアスは今や、ハムレットにとって王であり、母ガートルードの夫でもある。父権制的ルネサンス政体の中で、王殺しは大罪である。もし亡霊の話が真実でなければ、ハムレットは地獄に落ちて永遠に罰せられることになる。ハムレットは、息子が父に抱いてしかるべき愛と義務ゆえに、死へと追いつめられていく。
キリスト教的な考え方に基づく、ハムレットの倫理的葛藤や苦悩の過程をたどりながら、独白を軸として『ハムレット』を読んでいく。  

評価方法: 期末試験により評価する。

テキスト名: William Shakespeare, Hamlet, the Oxford School Shakespeare, Oxford University Press, 2002.

授業計画――――――――――――――――――――――――――――――
1.「最初の死骸」の比喩と皮肉(1幕2場)
2.ハムレットの現実嫌悪(1幕2場)
3.亡霊の物語、裏切られた欲望と「蛇」(1幕4−5場)
4.復讐の誓い、「関節がはずれた」世界(1幕5場)
5.亡霊の正体に対する不安(2幕2場)
6.二者選択の問題(3幕1場)
7.娘、妹、女としてのオフィーリア
8.劇中劇「ねずみ捕り」、叔父の犯罪の確信(3幕2場)
9.クローディアスの欲望の告白、復讐の意味(3幕3場)
10.ハムレットと父母との関係(3幕4場)
11.ハムレットの自己嫌悪と倫理的葛藤(4幕4場)
12.オフィーリアの狂気、息子・兄としてのレアーティーズ(4幕5場、7場)
13.墓場の場面、死の舞踏(5幕1場)
14.個人的復讐から政治的正義へ、犯罪防止としての王殺し
15.決闘と死(5幕2場)