1. | 人はなぜ争うか: 「言葉は世界を繋ぐ平和の礎」。これは本学のモットー、建学の理念であるが、ホッブズによれば、人が争う理由の一つに、動物と違って人間が言葉を持ってしまったことがあるという。言葉と法との関係を考えることから始めたい。 |
2. | イル・ポスティーノ: 映画のあらすじはテキストに譲る(以下同様)が、言葉が人間を行動に駆り立てることが主題となる。法という日本語自体、「のり」とも読む。そして「のり」は「宣」に通じ、法とは誰か(大抵は神様)が宣言したものと考えられてきた。古代においては、洋の東西を問わず、言葉(文字)を解釈する者に権威があった。神の言葉→それを伝える神官→法官→自然法→実定法(判例法)、といった法の進化の過程を考える。 |
3. | 羅生門: 黒沢明を有名にした古典的名画。原作は芥川龍之介の「藪の中」。裁判ではまず「事実認定」が行われるが、これがまず簡単ではないことを理解する。また、ホッブズが争いの原因に挙げている'vain glory' について考える。 |
4. | 12人の怒れる男たち/12人の心優しい日本人: この二つを対比すると、アメリカと日本の文化的相違が伺える。これらの映画を通して、刑事裁判のあり方、陪審制度導入の是非について考える。また裁判という場で「人を裁く」ということの意味を考える。 |
5. | 評決のとき/デッドマン・ウォーキング: 刑事事件では、極刑(死刑)が課せられる場合がある。特に死刑は世界的に廃止の方向にあるが、日本ではまだ存続の意見の方が強いようだ。死刑を刑罰として正当化する刑罰観とはどのようなものか、考えたい。 |
6. | 卒業/マディソン郡の橋: 恋と法はどんな関係にあるのだろうか。恋愛・結婚と婚姻との違いや婚約の拘束力について考える。最近、フランスではPACSと呼ばれる法が成立して、正式な婚姻関係にない二人(男女とは限らない)の連帯契約に正式な婚姻関係と同等の優遇措置が認められるようになった。法的婚姻制度の意味が問題になる。 |
7. | クレーマー、クレーマー/代理人: 北朝鮮の「拉致」問題(それ以前にはいわゆる「残留孤児」問題があった)をきっかけにクローズアップされた問題の一つに親子、家族の問題がある。親子が一緒に暮らすことは当然という雰囲気が日本には強いが、血縁関係のある「実の」親と養育した「育ての」親とは、子供にとってどういう意味があるのだろうか。人工授精や貸腹、クローンなどの医療技術の問題も考えなければならないであろう。 |
8. | 東京物語/花いちもんめ/母の眠り: 「法は家庭に入らず」といったかつての考え方と現在の親子法の違いを通して、家族と法の関係を考える。現在でもなお、介護保険のような法的介護制度には根強い批判がある。病人や老人の介護は家族の「愛情」によってなされるべきなのか、社会や国家が責任をもつべきなのか。 |
9. | エリン・ブロコビッチ: 民事裁判の現場を見る。判決、和解、調停などの民事紛争処理の方法について考える。また、クラス・アクションと呼ばれる集団代表訴訟のあり方や、最近日本でも議論されている ADR:Alternative Dispute Resolutionについても、その意義と問題点について考える。 |
10. | アミスタッド/目撃者: 'Imagine no possession' とはジョン・レノンの歌詞に見られるものだが、ここでは「所有権」の意義について考える。近代ヨーロッパの民法や人権(生命・自由・財産)概念の中核にこれが据えられた背景についても考えてみる必要がある。私的所有を認めない社会主義や特殊な共同体のメンバーと一般社会との関係も重要になる。 |
11. | レオン/ブレイブ: 人間はさまざまな「約束」をするが、そのすべてが法的に強制されるべき「契約」とは限らない。殺人や売春、奴隷契約などは無効とされている。人はなぜ約束を守らなければならないのか、契約を守らない場合、どのような法的処置がなされるのか。こうした点を中心に契約法の意義を考える。 |
12. | 東京裁判/スペシャリスト: 国家は犯罪を犯しうるか。この問題は、国家ばかりでなく、法的に存立が認められている「法人」についても当てはまる。企業の刑事責任を問うことは可能か、可能としたらどういう制裁が考えられるのだろうか。戦争は「犯罪」なのか、についても考える。 |
13. | 遠い夜明け/ライフ・イズ・ビューティフル: 人はなぜ人を差別するのだろうか。「法の下の平等」とは何を意味するのか。男女差別の問題については、時に絶対的平等を求める動きと違いを違いとして認めるべきだとする主張が対立する。こうした問題を中心に、法的平等の意義と限界について考える。 |
14. | 風の谷のナウシカ: 人間と自然の関係について考える。環境問題が大きなテーマになっている現在、森や川といった自然物自体が「権利」をもち、法廷に立ちうるとする考え方を検討したい。 |
15. | マーシャル・ロー: 2001.9.11のいわゆる「同時多発テロ」事件と酷似した内容のゆえにしばらく放映が見送られたといういわくつきの映画。マーシャル・ローとは「戒厳令」のこと。通常の法体制が一時的にせよ停止させらる事態である。法と国家、法と社会秩序の問題が最も現実的かつ先鋭に現れるこの事態をもとに、「法とは何か」を考えたい。 |