わたしのソウルフード –食べ慣れたものから普段着の文化をさぐる–⑬

チャン・チョン・ザン先生(ベトナム: ファン・ザンータップ・チャム出身)

 

お米をさまざまに加工して食べる、それが稲作の国ベトナムのやり方

–バイン・カン(Bánh Căn)

 

米粉をホットケーキ状に焼く

バイン・カンは、直径10センチほどのホットケーキ状の食べ物です。米粉でできているところはライスペーパーと同じですが、少し厚みがあるのです。これにまずネギを載せます。あとは、玉子(鶏卵、アヒルの玉子)、エビ、イカ、豚肉、マンゴーなど、お好みの具を載せます。一番上に、バイン・カンをもう一枚載せてサンドイッチ状にしてタレを付けて食べます。

タレは、ニョクマム(魚醤)を下地にして、そこに加える食材を変えることでバリエーションを出します。ニョクマムは、魚介類に塩を加えてを発酵させたたまりの液体です。バイン・カンのタレは、それをベースにして作ります。 とうがらし、ライム、ニンニクという香辛料を加えたタレ。カボチャやトマトなど野菜を加えたタレ。どの家にもあるでしょう。

 

専用のプレートがある

子どもの頃は、朝、昼、晩、いつでも食べました。10枚も食べればお腹いっぱいになります。

昔は家で作ったものですが、いまではお店でも売っています。

すでに具が入った2枚一組で売っています。露店で食べれば5組で2万ドンくらいでしょう。100円くらいの感覚です。ホーチミンなら、その倍くらいします。

バイン・カンを焼く専用のプレートがあります。日本のたこ焼き器に似ていて、穴に溶いた米粉を注いでいけば、一度に十数枚焼けます。わたしの故郷であるベトナム中部の出身者なら、たとえ海外にいても、たいていこのプレートを持っているものです。

 

主食からお菓子まで

ベトナムは世界第5位の米の生産地です。そして、消費量でも第5位という、米を食べる国でもあります。米を使った食べ物は、いろいろあります。

たとえば、正月に食べるチマキは全国にあります。結婚式では、バイン・フーテーというお菓子が出ます。フーは夫、テーは妻の意味です。

ベトナムの味の傾向は、北部はしょっぱい、中部はしょっぱく辛い、南部は甘いと言えるでしょう。わたしの故郷である中部の海岸地方は、天災が多いのです。貧しい地域が多く、そうすると食べるモノが塩辛くなる傾向にあるようです。