わたしのソウルフード-食べ慣れたものから普段着の文化をさぐる⑪

第11回:亀井・ダイチ・アンドリュー先生(カナダ: オンタリオ州オタワ出身)

 

いまやカナダの味を代表するジャンクフード

–プーティン(Poutine)とビーバーテイル(Beaver Tail)–

 

 プーティンとビーバーテイルは、カナダ人なら誰でも知っているジャンク・フードです。どちらも、オシャレな食べ物ではありません。レストランで食べるというより、外で立ち食いするのが似合っています。でも、いまではカナダを代表するフードとして国外でも認識されています。

 

(ケベック発祥の軽食:プーティン)

  プーティンは、フライドポテトに粒状のチーズカードとグレイビーソースをかけたもの。ポテトは太めのものを使います。簡単な料理なので家でも作りますし、あちこちにある出店のカートで買うこともできます。高校のカフェテリアにもありました。サイズによりますが、値段は数百円(5~8カナダドル)くらいでしょう。高校生のときは、自分で作っていました。

 

 お店で買うとカナダのサイズはかなり量がありますから、みんなでシェアして食べます。高カロリーなので食事代わりに食べることもあります。見かけは決してきれいではありませんが、その見かけを裏切る味があり、わたしはいまでも好きです。

 

 いろいろなチェーン店でも提供されているので、いまはカナダ全域で食べられているでしょう。元々はケベック州で生まれたと言われています。ですから、ケベックやオンタリオで食べられることが多いと思います。

 

 わたしが9歳でオタワに来たときにはすでに一般的でしたから、おそらく数十年の歴史はあると思います。いまはカナダの名物料理として、日本でも食べられます。

 

 (オタワ発祥の冬の味:ビーバーテイル)

  ビーバーテイルは、平たい揚げパンに、シナモンシュガーなどをトッピングしたものです。その形がビーバーの尻尾に似ていることから、この名前になりました。

 

 これは、オタワ発祥の冬の味です。オタワを流れるリドー運河は冬になると凍り、世界最長のスケートリンクになります。そこでおやつとして、売り出されたのが始まりです。運河でスケートをして、合間に手袋をはずして温かいビーバーテイルを食べる。そういうスタイルが定着しているので、氷点下20度くらいで食べるのが醍醐味なのです。日本で言えば、焼き芋の感じかもしれません。

 

 トッピングにもよりますが、これも数百円(4~5カナダドル)くらい。チェーン店があるのでカナダのほとんどの地域で食べられていますが、オタワとその周辺が一番多いと思います。

 

(移民の文化が影響するカナダの食)

  カナダは移民の国です。移民した人が持ち込んだ食文化があります。国土も広大ですので、地域によって食べ物はかなり異なります。

 

 わたしの家も、イギリスからカナダに移住して来ました。プーティンやビーバーテイルは、「おふくろの味」ではありません。うちの母は、伝統的なイギリス料理を作っていました。

 

 バンクーバーなど、中国系の移民が多い西海岸では中華系のレストランやスーパーも多く、味は濃いめ。週末には飲茶を楽しむ人もたくさんいます。アジアの食材も手に入りやすいので、そこに育つことで、アジア系の食べ物がソウルフードになる人も少なからずいるのです。

 

 東海岸地方やフランス語圏のケベックなどでは、ヨーロッパ系の食べ物が好まれます。プーティンも、もともとフレンチ・カナディアンのものです。