わたしのソウルフード-食べ慣れたものから普段着の文化をさぐる⑩
第10回:ロマン・パシュカ先生(ルーマニア:マラムレシュ県 バイアマーレ出身)
弟と一緒になってパイの生地作りを手伝った
–プラチンタ(Plăcintă)
(メインにもなり、デザートにもなる)
プラチンタは、パイの一種です。これは、生地に特徴があります。
生地を、半透明になるくらいまで薄く伸ばします。そこに具をのせて、また生地をのせ、具をのせと、ミルフィーユのようにしていき、最後にオーブンで焼いたものです。
具は、肉でも、リンゴでも、カボチャでもいいのです。肉ならば食事のメインになりますし、リンゴを入れればデザートになります。
(テーブルの大きさくらい薄く伸ばす)
祖母が作ってくれたのがおいしくて、わたしも弟も大好きでした。
ただ、作るのは手間が要ります。母はなかなか作ってくれませんでした。わたしたちがせがむと、条件つきで取りかかってくれました。それは、わたしと弟が手伝うこと。粉をこねて、キッチンテーブルくらいまで薄く伸ばす作業をします。
そういう料理でしたから、食べられるのは特別な日でした。誕生日、クリスマス、お正月、イースターといった、家族全員が集まるときです。
(ルーマニア全国にも、近隣諸国にもある)
うちの祖父母は、セルビアに生まれ、ルーマニアに移ってきた人たちです。
プラチンタは、どちらの国にもあります。似たような料理は、バルカン半島一帯に見られます。このあたりは、トルコの影響が強いのです。
ルーマニアにも全国に プラチンタは ありますが、地方によって作り方がちょっとずつ違います。オーブンで焼くかわりに、油で揚げるところもあります。
いまではスーパーに行けば、プラチンタの生地の冷凍食品が売っています。
(同じものでも食べ方が違う)
ルーマニアの食文化は、東はロシアの、南はギリシャの影響を受けています。同じものでも食べ方が違うのです。たとえば、サルマーレ(ルーマニア風ロールキャベツ)は、北はサワークリームをかけます。でも、南に行くと、唐辛子と一緒に食べるのです。
南北の特徴としては、北は味が濃く、油っこいものを好みます。南はさっぱりとして味は薄い傾向です。
日本のルーマニア料理店は、わたしが知っているのは3つですが、プラチンタはなかったようです。どうやら自分で作るしかありません。