わたしのお茶の時間–食べ慣れたものから普段着の文化をさぐる

青野英美先生(中国:黒竜江省ハルピン出身)

 

お茶を飲むのは

ちょっとした贅沢だった

 

普段はお湯か水を飲んでいた

わたしの育ったハルピンは、万里の長城の外側にあたり、中国の文化の中核から離れています。満州族が中心で、その後移民が増えた土地です。そこでは、お茶を楽しむといった文化的習慣はありませんでした。おそらくいまでもないと思います。

お茶をいつも飲める人は余裕のある人で、普通は休憩時間に、お湯か水を飲んでいました。日本では、子どもの水筒にもお茶などをいれますが、わたしが子どものときは、水かお湯でした。

 

ジャスミン茶が一般的

うちの父は、お客さんが来るとお茶を出していました。それはジャスミン茶です。湯飲みではなく、グラスを使っていました。中国の北方では、ジャスミン茶はよく飲まれています。水筒に直接茶葉を入れて、またクコの実を追加したりして、それを持ち歩いて飲む人もいます。

お茶を飲む習慣はありませんでしたが、お菓子はねだりました。

お菓子の種類は少なかったと思います。キャンディーなどは貴重です。おやつは、たいていは朝ご飯の残りのようなものでした。フルーツはありましたが、冬にはありません。とにかく甘いものが貴重でした。

 

日本に来てすぐに習慣になった

二十歳で日本に来てからは、習慣的にお茶を飲むようになりました。茶葉も道具も普通に手に入りますから。いまでは緑茶が好きです。コーヒーも毎朝飲んでいます。

日本に来て7年後に中国に戻ったときは、もうお茶がないとだめという気持ちになっていました。急須のいいのを買ってお茶を淹れていました。

忘れられないのが、高級な龍井(ロンジン)茶の味です。中国人の指導教官の家でいただきました。全部新芽でできていて、お湯を入れると茶葉が一斉に立つのです。味も日本の緑茶とも違う、なんとも言えない味でした。

 

中国にもある文化人のお茶

中国にも、日本の茶道に似たものがあります。昔の文化人の趣味でしょう。茶室もあります。ただ個々の趣味が出る面が多く、茶器、茶葉、水にいろんなこだわりがあるようです。そのなかには、茶器についた茶渋をわざと落とさないといったこともあります。ですから、茶器を洗うのも他人にまかせないそうです。

日本の茶道は、飲む方にも作法などを要求しますが、中国のお茶はそういうことはありません。