スウェーデンで学んだコーヒータイムの習慣

わたしのお茶の時間–食べ慣れたものから普段着の文化をさぐる–
デシルバ先生(アメリカ・ニューヨーク州出身)

 

スウェーデンでは

みんなフィーカをする

 

わたしのお茶の時間は、スウェーデンで経験したものです。1980年代の半ば、大学院のとき、一年間フィンランドに留学しました。わたしはもう結婚していて、家族も一緒でした。滞在の最後に、一ヶ月、スウェーデンで過ごすことにしたのです。スウェーデン語の夏季講座がウプサラ大学で行われ、それに参加しました。

スウェーデンには、フィーカ(Fika)と呼ばれるコーヒータイムの習慣があります。午後、だいたい3時頃ですが、みんなが集まってコーヒーを飲み、おやつを食べます。コーヒーは普通のドリップ式ですが、アメリカのものより強いです。紙コップなどではなく、ちゃんとカップかマグを使います。

お菓子は、たいていはブッレ(Bulle)というシナモンロールです。シナモン以外に、カルダモンというスパイスが入っているのが特徴。表面にパールシュガーがかかっていて、全体としてはほのかに甘いものです。コーヒーとブッレというのがフィーカの定番でしょう。

 

コーヒーがつくる

コミュニケーションの時間

スウェーデンの人々にとって、フィーカは飲み食いのためというより、人と交流するための時間なのです。友人同士でカフェに集まってフィーカします。たいていの会社にはフィーカの時間がとってあって、仕事から離れて30分ほどみんなとお喋りするのです。

この習慣は、19世紀くらいからあるようです。いまは、スターバックスのようにチェーン店が多くなりましたが、スウェーデンには昔ながらの喫茶店が残っています。学生たちも、友だち同士でフィーカしています。わたしの通った夏季講座でも、「明日の授業では、ゲストとして政治家が来るからフィーカしながら話をしよう」というときがありました。

ちなみに、フィーカの語源は、コーヒー(Kaffe)を逆に言ったという説があります。

 

アメリカの若者は

コーヒーを飲まなくなった

日本にも、午後3時にお茶の時間があります。日本に来た頃、神奈川県の教育委員会に勤めていました。そこで、3時になるとお茶を淹れて、お菓子を配ってくれるのに、最初はびっくりしました。初めてアイスコーヒーを飲んだのも日本です。あの頃、アメリカでは、アイスコーヒーはあまり飲みませんでした。

アメリカ人ももちろんコーヒーは飲みますが、フィーカのような習慣はありません。スターバックスなどでは、テイクアウトしたり、ドライブスルーの利用も多いようです。いまの学生たちは、コーヒーをあまり飲みません。ペプシやコカコーラでしょう。

フィンランドとスウェーデンとの縁はその後も続き、近年もフィンランドのブックフェアに行ったり、スウェーデンの夏季講習に参加したりしています。もちろん、いまでもフィーカは続いています。