わたしのお茶の時間-食べ慣れたものから普段着の文化をさぐる part.2-②

重冨スパポン先生(タイ・ソンクラー県出身)

 

祖母が、おやつを作ってくれる

 わたしの家は、中国から移って来た家族です。家のなかは、祖母が仕切っていました。

 子どものときは、お茶の時間というものはありませんでした。お茶は、大人の文化でしたから。でも、おやつはありました。学校から帰ってくると、祖母の手作りのおやつが用意されています。

 緑豆を砂糖で甘く煮たものがよく出ました。日本のお汁粉に似ていますが、緑豆を使っているので色は緑です。これは、便秘解消効果もあり身体にもいいのです。余ったら冷やしておけば、夏はシャーベットのご馳走です。

 サツマイモを甘く煮たものもありました。こちらは生姜が入っているので、風邪予防の効果もあります。甘い物を食べながら飲むのは、水でした。

 

父は茶器のセットをいくつも持っていた

 大人たちが飲んでいたお茶は、ウーロン茶です。朝作っておいて、いつでも飲めるようにしていました。

 そういう日常のお茶とは別に、父にはお茶の趣味があったようです。小振りの急須とかわいい茶碗がいくつか組になった、茶器のセットを何組か持っていました。

 お客さんが来ればそれでお茶を出して、お茶についてのこだわりを話し合ったりしていました。そこで飲まれるお茶は、エスプレッソのように濃く苦いものです。子どもが飲みたいと思うものではありません。

 

男たちは、朝の喫茶店に集まる

 お茶の時間と言えば、わたしが育った南の地方には、特有の文化がありました。

 男性は、朝食を家で取りません。外の喫茶店に集まって、お茶と朝食をとります。

 そのとき飲むのは、たいていコーヒーです。地元の紅茶もありますが、チャイに似た感じです。どれも、砂糖はたっぷり入れて甘くします。

 ご飯は持ち込みです。バナナの葉に包んだちまきや、揚げパンなどです。ちまきはココナツミルクで煮てありますし、揚げパンはコンデンスミルクをつけて食べます。そうしながら、地元産業であるゴムの景気や、政治の話などをするのです。選挙が近くなると、立候補者が挨拶にまわってきます。

 こうしたことが、毎朝、7~8時頃から一時間くらい行われるのです。他の地方には見られないタイ南部の習慣で、いまでも田舎では行われています。ただ、人が集まるので、最近ではテロの標的になることもあるのです。

 

大学に入ってからコーヒーを飲み始めた

 わたしがコーヒーを飲み始めたのは、大学に入ってからです。バンコクは、コーヒーの文化でした。布製のフィルターを使ってコーヒーを出します。食器はコーヒーカップではなく、ある程度高さのあるグラスを使います。下に3分の1くらいコンデンスミルクを入れ、その上にコーヒーを注ぎます。かき混ぜるためのスプーンが必ずついています。この飲み方は、「昔のコーヒー」と呼ばれています。

 一緒に食べるものは、揚げパンか、焼いたトーストにマーガリンと砂糖を付けたものもあります。毎朝、7時半頃、仕事をする前にいただきました。

 夜、食事が終わってからコーヒーを飲みに行くことがありますが、昼間はほとんど飲みません。コーヒーは新しい習慣なのです。

 

個人主義がタイのやり方

 日本の職場では、休憩時間は休憩室に集まって来て、みんなでお茶を飲むことが多いと思います。タイは個人主義が強いので、休憩室といった場所はありません。休憩時も、自分のデスクで飲んだり食べたりすることが多いのです。