リレーコラム・２００７．6.

「訓民正音について」

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 我々が今‘ハングル’と呼んでいる文字は李氏朝鮮第４代の王である世宗大王が世宗２５年（１４４３年）に作ったものであるが，もともとの名前は‘訓民正音’であり，‘民を教える正しい音“という意味である 。実は，訓民正音と呼ばれる対象には２種類のものがある。一つは文字の名前としての‘訓民正音’であり，もう一つはこの文字を作った原理と用例を解説した本の名前としての『訓民正音』である。

  韓国は訓民正音が創製される以前には固有の文字がなく，漢字を借りて使用していた。それゆえ，一般の人たちが本を読み文を書くなどの文字生活に参加することが非常に難しかった。『訓民正音』の序文では，世宗が一般の民衆が文字を簡単に学んで楽に書けるようにしようと新たな文字を作ったことを明らかにしている。これを通して我々は，世宗大王が訓民正音を作った目的と意図がわかる。実際のところ，漢字は中国語を記録するために作られた文字であるので，韓国語を記録するのには限界があるが，訓民正音が創製されてはじめて韓国語が本格的に記録され始めたのである。

  訓民正音はローマ字と同じく子音と母音が別に作られた。子音，すなわち初声字の場合には発音器官をかたどって，‘ㄱ(牙音), ㄴ(舌音), ㅁ(脣音), ㅅ(歯音), ㅇ(喉音)’などの基本文字を作った。 ‘ㄱ’は舌根が口腔をふさぐ形を，‘ㄴ’は舌先が上の歯茎に付く形を，‘ㅁ’は口の形を，‘ㅅ’は歯の形を，‘ㅇ’は喉頭の形をかたどって作ったものである。また，音の強さによって基本文字に画を添加するやり方で文字を作ったが，例えば，基本文字の‘ㅅ’から‘ㅈ’を，‘ㅈ’から‘ㅊ’を作った．初声字を発音器官の形と加画の原理によって作り，これを体系的に見せるやり方は，現代音声学において子音を‘調音位置’と‘調音方法’に従って分類するやり方と非常によく似ている 。このような点において，訓民正音を科学的であり独創的な文字だと言うのである。

  母音すなわち中声字の場合は，天，地，人の形をかたどって作った．‘ᆞ’は丸い形で天を，‘ㅡ’は平らな形で地面を，‘ㅣ’は立っている形で人をかたどったものである。そしてこの３つの文字を組み合わせて別の母音字を作ったが，まず単純母音‘ㅏ, ㅓ, ㅗ, ㅜ’などを作り，さらに二重母音‘ㅑ, ㅕ, ㅛ, ㅠ’を作った。

  『訓民正音』において正音２８字を創製したと述べているが，この２８字は初声字‘ㄱ, ㄴ, ㄷ, ㄹ, ㅁ, ㅂ, ㅅ, ㅇ, ㅈ, ㅊ, ㅋ, ㅌ, ㅍ, ㅎ, ᅌ, ᅀ, ᅙ’の１７字と，中声字‘ᆞ, ㅡ, ㅣ, ㅏ, ㅓ, ㅗ, ㅜ, ㅑ, ㅕ, ㅛ, ㅠ’の１１字である。