リレーコラム・２００8．6.

 分かち書き

権容�m

 韓国語には日本語とは異なり，「分かち書き」というものがある．以下の文章を読んでみよう．“아버지가방에들어가신다.” この文章は，「分かち書き」がまったくされていない文章である．従って，文章の意味を理解するのが難しい． ‘아버지（お父さん）’が ‘방（部屋）’に入るのか， ‘가방（かばん）’に入るのか，わからないのである．この文章は，“아버지가 방에 들어가신다.”のように分かち書きをすれば，その意味を正確に理解することができる．日本には漢字とひらがなまたはカタカナを共に用いるので，「分かち書き」をしなくても大きな問題がないが，韓国語はハングルだけを用いる場合が多いので，このような問題を避けることができない．このように，韓国語では文章の意味をちゃんと伝達し，ちゃんと理解するためには，「分かち書き」ぜひとも必要である．

  韓国語の表記の規則である， <한글맞춤법>（ハングル正書法）には「分かち書き」に関連した規則が独立して設けられているが，, <한글맞춤법>第1章第2項において， 「文章の各単語は分かち書きすることを原則とする．」と明らかにしている．文章においてすべての単語を分かち書きするということを，この規定で知ることができる．このように考えれば，非常に簡単に見える規定である．しかしながら，実際に韓国語で文章を書くとき，「分かち書き」の規定にあわせて書くことは，そんなに簡単なことではない．韓国人たちも「分かち書き」に関しては，混乱を感じる場合が非常に多い．

  一旦，単語というものが何であるかを知らなくてはならない．単語は，その定義がやさしくはないが，文章において自立的に用いられるならば，単語であるということができる．上の“아버지가 방에 들어가신다”において，‘아버지, 방, 들어가신다（お入りになる）’は，文章において自立的に用いられる．従って，単語であり，分かち書きすればよい．問題となるのは， ‘-가（が）, -에（に）’ のような助詞である．韓国語において助詞は単語として処理するので，分かち書きしなければならないと考えがちである．しかしながら，上の例でわかるように，<한글맞춤법>においては助詞を前の言葉にくっつけて書くようにしている． <한글맞춤법> 第5章第41項において， 「助詞はその前の言葉にくっつけて書く．」と明らかにしているのである．

一方，依存名詞は文章において常に連体修飾語が前に来なければならず，自立的に用いられないという特徴がある．しかしながら，依存名詞は単語であるので，分かち書きしなくてはならない．依存名詞に関連して問題となることは，依存名詞と助詞の形態が同一である場合である．このとき，依存名詞は前の言葉と分かち書きしなくてはならず，助詞はくっつけて書かなくてはならない．以下の例を見よう．

(가)         철수를 십 년 만에 만났다.（チョルスに10年ぶりに会った．）

(나)         철수만 왔다.（チョルスだけ来た．）

(가)の‘만’は‘時間の経過’を表すとき用いられる依存名詞であり，(나)の‘만’は 助詞である．従って，(가)においては‘십 년 만에’のように分かち書きし，(나)においては‘철수만’のようにくっつけて書いている．

また，依存名詞と 語尾の形態が同一である場合もある．以下の例を見よう．

(다)         철수가 떠난 지 삼 년이 됐다.（チョルスが出発してから10年になった）

(라)         철수가 왔는지 모르겠다.（チョルスが来たのかわからない．）

(다)の‘지’はやはり‘時間の経過’を表すときに使う依存名詞であり，(라)の ‘-ㄴ지’は主に‘알다（わかる）, 모르다（わからない）’の前に用いられる語尾である． (다)においては‘떠난 지’のように分かち書きをしており，(라)においては‘왔는지’のようにくっつけて書いている．

  ハングルで文を書くときには，「単語別に分かち書きするのが原則であるが，助詞は前の言葉にくっつけて書く」ということを念頭において書く必要がある．そして，韓国語の辞典を常にかたわらに置き，文を書く習慣を持つことも重要である．単語の意味ばかりでなく，助詞や語尾のような文法情報まで辞典で確認しながら文を書くならば，「分かち書き」に関する不安をやわらげることができるであろう．